教育福島0144号(1990年(H02)01月)-022page
特選入賞論文
進んで活動に取り組む幼児を育てる保育の実践
〜絵画表現への取り組みを中心として〜
桑折町立睦合幼稚園 教諭 岩崎実江
一、主題設定の理由
近年、核家族化・少子化・都市化などが進み、幼児を取り巻く環境が変化して、子どもの遊びができにくくなってきている。本園においても、実態調査から、家庭では既製の玩具を使った遊びを好む幼児や、テレビ視聴が一日平均三〜四時間にわたる幼児が半数以上もいることがわかり、受身的な生活になりがちであることがうかがえる。このような幼児は言われたことはやろうとするが、自ら考えて行動したり表現したりすることに欠け、日常の生活に消極的な姿となって現れている。
これらの姿は、特に絵画表現の活動の場で強く感じられる。テレビや絵本などで知識は得られても、生活の中で様々な人・物・場との直接の触れ合いが少ない子、心を揺り動かされる出来事に出合っても、そのことに感動を覚えない子からは、その子なりの心あふれる表現を引き出しにくい。
そこで、幼児が受身的になりがちな絵画表現を通して、自分から進んで絵画表現の活動に取り組み、自分なりに感じ取り豊かにイメージを広げていく力を伸ばしたいと考え、本主題を設定した。
二、実践のねらい
(一) ねらい設定の視点
表現活動の基盤は、教師との信頼関係に支えられた日常の生活体験の充実にあると言われている。幼児のイメージの豊かさは、単に絵画表現の場での指導にとどまらず、園生活全体が幼児にとってどのような場であるかということに深くかかわってくると思われる。
そのことは、今回改訂された「幼稚園教育要領」においても、幼稚園生活を”幼児たちが主体的に活動できる豊かな生活の場”と方向付けているように、幼児にとっての生活は、幼児が興味・関心を持ったことに夢中で取り組める幼児期にふさわしいものでなければならないと言える。
そうした生活の中で、幼児が様々に表現する行為を丁寧に受け入れて認めていけば、幼児は積極的に行動を起こすようになり、その意欲は、体の動きにも言葉にも描くことにも現われていくだろうと考え、次のように実践のねらいを設定した。
(二) 実践のねらい
幼児の考えを大切にし、自分たちの手で自分たちの考えたことを実現していく楽しさを味わえるように園生活づくりをすることにより、豊かな心を育み、進んで絵画表現の活動に取り組む幼児を育成する。
三、実践全体の方策
(一) 幼児の表現活動の根底には、情緒的に安定した生活があることを重視する。
○ 教師は、幼児の感じたことや夢を大切にし、幼児の感性に共感できる心を持ってかかわるように努める。
○ 幼児相互の人間関係を温かいものに育て、お互いに認め合うことを大切にする。(二)日常生活を豊かにする環境の構成−状況づくり−に努め、幼児が自分たちの手で自分たちの思いを実現できるよう指導過程を工夫する。
○ 体で触れ、心に感じる経験や活動を育て、感じたことや考えたことを表出できるようにする。
○ 園行事などでは、幼児自らの発想を生かし運営できるように工夫する。
○ 自然の中で思いきり遊んだり探索したりする機会を多くし、周囲の事
▼作品、お話の絵「ブレ−メンの音楽隊」(実践例3より)