教育福島0144号(1990年(H02)01月)-033page

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二十四ぺージより続く

 

=お話の絵を取り上げた意図=

お話を聞いて想像したことを描き表すということは、頭の中にため込まれている知識や記憶を組み合わせてイメージがつくられ表現されていくものであるので、日常の生活において様々な体験をし、幼児の空想が自由に表出できるような温かい雰囲気づくりがなされていることが大切な要素である。

これまでの絵画表現の活動は、一連の活動への自主的・自発的な取り組みから充実感を味わい、自由な指導形態の中で自然に絵画表現の活動に移行していくという流れが中心であった。それが望ましいやり方であると考えているが、ここでは、それぞれの幼児なりに感じ、考え、絵画表現の活動に進んで取り組むようになってきたかを確かめたいという意図のもとに”お話の絵を一斉の指導形態の場に設定してみた。=活動の様子=(省略)=反省・考察=

〇 お話の楽しさに心を踊らせた体験が、そのまま表現意欲に結び付き、ほとんどの幼児が進んで取り組めた。

これは、日常の保育の中で絵本やお話に親しんできたこと、発表会やこま回し、パズル製作などの課題活動を楽しんでやり遂げてきたことにより、課題意識が高まってきていることも影響していると思われる。

○ 登場人物の中で、幼児になじみの薄いロバをどう視覚化したらよいか迷ったが、幼児同士の会話の中に「ロバってどうなってんの?」「馬だよ。馬に似てんの」などを耳にした。

幼児の経験を広めたいと園外に連れ出し、直接触れたり見たりする機会を多くするように努めてきたが、そうした場では、その物をそのとおりに認識させるだけでなく、全体的な特徴や部分的な特徴について、幼児のよく知っている物と関連付けてとらえさせておくことも必要であると思われた。

○ 絵画表現の活動においては、直接的な指導技術よりも、幼児の感性を日常生活の中でどのように育むかが最も重要であるという認識を新たにした。

○ こんなふうに描いてはまとまらないのではと不安に思うことがあったが、一人.一人を受け入れなければと自分を戒めて、良い点を見つけるように努めた。まだまだ自然な気持ちで共感できるようになっていないことを反省する。

五、実践のまとめ

(一) 実践の成果

〇 一年間の実践をとおし、幼児同士で認め合ったり励まし合ったりする姿が多く見られるようになった。また、絵画表現の場をはじめ、日常の様々な活動に進んで取り組み、最後までやり通そうとする姿からは、自信や園生活を楽しむゆとりが持てるようになってきていることが感じられた。それぞれの幼児の一年間の作品を並べてみると、表現内容も少しずつ豊かになってきており、実践のねらいとした「自分なりに感じ、考える豊かな心」が育ってきていると考えられる。

○ 進んで取り組めるということは、幼児が、思ったこと感じたことをこだわりなく表出・表現できるということでもあると思われた。

学級全体がそうした雰囲気になるよう、教師や友達との関係が信頼で結ばれ青緒的に安定した生活ができる学級経営の大切さが感じとれた。

○ 幼児自らの意志や要求に基づいて起こされる活動は、幼児自身が納得するまで高まっていくが、教師中心の指導技術を先立てた活動の設定では、受身的な取り組みになりがちである。

幼児の自発活動を大切に育てながら、表現の喜びが味わえるような生活体験・感情体験を豊富に与えていく援助の工夫が大切であり、「自分たちの手で自分たちの考えたことを実現していく楽しさを味わえるようにする」という視点は、適切であったと思われる。

○ 絵画表現の場における指導では、幼児が日常生活の中で十分に楽しんだり、探ったり、心を動かして取り組んだりしている様子を丁寧に認め、表現意欲が高まるチャンスを適切にとらえて誘いかけていくことが、幼児の進んで絵画表現に取り組む姿を生み出すということを再認識した。

(二)今後の課題

○ 日常の生活体験の充実を基盤にして、それぞれの幼児なりに豊かなイメージを蓄えていけるような援助を積み重ねていきたい。

○ 絵画表現にとどまらず、幼児に生き生きと自己表現できる力を身に付けるため、幼児自身の自発的な遊びが中心となる園生活を創り出していきたい。

 

作品、お話の絵「ブレーメンの音楽隊」

作品、お話の絵「ブレーメンの音楽隊」

 

 

 


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