教育福島0144号(1990年(H02)01月)-047page

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しました。(資料1参照)

 

三、情報活用能カの育成プロセス

情報活用能力をより効果的に育成するためには、育成すべきそれぞれの要素の育成過程を明らかにする必要があります。本研究では、問題(課題)の発見から解決・評価までの学習過程を情報活用という観点から見直し、教科内容等の特質、児童生徒の発達段階や実態、情報や情報手段の特質・特性等を踏まえて『情報活用能力の育成プロセス』を作成しました。一図2参照)

特に情報の創造・蓄積・活用はどの学習段階でも行われるため、これらを中央に位置付けました。また、児童生徒が学習を進める途中では絶えず情報手段と密接な関連を持つため、三角形状にしたプロセス図の一角に『解決のための情報手段』を位置付けることにしました。

 

四、授業を通した具体的実践

情報活用能力が育成された状態像の具現に向けて、福島市内の中学校(第二学年)の一学級を研究対象に特別活動の学級指導で授業を実施しました。

対象学級の事前調査(評定尺度1)、2)の結果では、下位目標の1)『新たな情報の創造』及び下位目標の11)、12)『コンピュータの特徴の理解と操作能力』についての要素が低いことが分かりました。

そこで、進路指導の『学ぶための制度と機会』を題材に、生徒一人一人がパソコンを自由に操作しながら自己の進路資料としてまとめることを通して、必要な情報を収集選択、処理、創造、伝達する等の能力の向上を図ることにしました。

本時のねらいは、各高等学校の学習内容や自校卒業生の進路状況に関する情報を収集・交換し、各学年の特徴を調べて自分の進路を選択しやすくさせることでした。まず県北地区の公立、私立高等学校の学校要覧にそって詳細なデータベース一情報検索型CAI、フレーム数二百二十七、ソフト容量七百五十KB)を構築しました。

実際の授業では、事前にパソコンの基本操作を約三十分間行わせてから、生徒たちの知りたがっている調査項目のグラフ表示や先輩の話(録音)の聴取などにより授業の導入としました。その後二人で一台のパソコンを使って必要な情報検索を行わせ、学科の内容や特徴を調べながら自己の進路情報をまとめさせて授業を終わっています。

授業全体としてみれば、事前指導の段階から生徒たちの意欲的な活動が見られ個人差はあるものの各自が必要とする進路情報をまとめることができました。

 

五、研究実践のまとめ

研究の初年度として六十三年度は生徒の情意的な側面を重視するため、評定尺度2)(自己評価)を小・中・高校用と別々に作成し、発達段階などの差に対応できるよう文言の表現に工夫を重ねてきました。この評定尺度2)の内容は、検証授業の事前・事後調査やその他の試行結果からみて特に問題はないと考えられますが、更に第二年次の研究実践を通して検証を行う予定です。

前述のモデル図(図2)は情報活用能力が育成された状態を受けて作成したものですが、これは目標分析全体(図1)と密接な関連を持つものであり、情報活用能力を育成するプロセスそのものを表す基本概念となるものです。授業では、この実践モデルを更に具体化し、情報手段と密接に関連づけた学習過程によって検証を試み、次のような成果が得られました。

(1) CAIソフト等によりパソコンの基本操作を事前指導しておくことは、12)『情報手段の操作能力』について下位グループほど向上が著しい。

(2)データベースを用いた授業では、項目検索を行う一パソコンの機能を生かす一展開の仕方が有効である。また、問題点としては次の事項があります。

(1) 資料等を準備するためには、相当の時間と労力が必要である。

(2) パソコンの設置台数が少ない場合の利用方法を更に検討すべきである。

 

六、おわりに

研究の初年度として試行的な実践でしたが、これを基に平成元年度は小・中・高校で多くの授業実践を進めています。本研究の詳しい状況については、県教育センター刊『研究紀要 第七六号』を御覧下さい。

 

 

 

 


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