教育福島0144号(1990年(H02)01月)-054page
ふるさと探訪
県指定重要無形文化財(工芸技術の部)
昭和村からむし織
昭和村からむし織は、会津地方特有の雪と湿度を不可欠の生産条件とし、からむしを手うみ(手で糸を作り出す作業)した糸をもとに、いざり機で織るという伝統的な染織技術で、歴史的にも価値が高く貴重といえる。
からむし(イラクサ科の多年草)の栽培及びからむし織が奥会津の山村へ普及したのは、応永年間(一三九四〜一四二八)蘆名時代の奨励によるとされ、小千谷縮・越後上布の原料として、明治初期までは相当盛んに栽培・移出され、地元でもいざり機織りが行われていた。
夏衣の涼感、肌ざわりの良さで高く賞美されていたが、栽培及び手うみが容易でないこと、いざり機織りの手工芸的技術の伝承が困難で、急激に衰微し、かろうじて現在、大沼郡昭和村に維持されている。
からむし栽培から機織までの全工程にわたる用具と、その原料及び製品については、昭和村の大芦民俗資料保存会が収集保存しているものが、既に昭和五十八年に県指定重要有形民俗文化財の指定を受けており、苧引き(からむしから繊維を取り出す作業)から機織りまでの技術については、「昭和村からむし織」として、昭和六十三年に県指定重要無形文化財(工芸技術の部)に指定された。
からむしの刈り取り
手うみ(指先でからむしを裂き糸をつくる)
いざり機
からむし織の帯
ふるさとの文化財