教育福島0146号(1990年(H02)04月)-010page

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「今、どんなことを学んでいるか」が評価される、いわゆる学習社会の実現が望まれています。

 

3 生涯学習と生涯教育

 

生涯にわたる学習の勧めは、今に始まったことではありませんが、「生涯教育」という言葉は昭和四十年にユネスコで提唱されたのが始まりとされています。我が国では昭和五十六年に中央教育審議会の「生涯教育について」の答申の中で「生涯教育」と「生涯学習」の二つの言葉の使い分けをしています。

それによると「人々が、自己の充実啓発や生活の向上のため、自発的意思に基づき生涯を通じて行うものが生涯学習」であり、この生涯学習を援助するために「社会の様々な教育機能を総合的に整備充実しようとすることが生涯教育」の考え方であるとしています。

その後、昭和六十年の臨時教育審議会の第一次答申では、学習者への立場を尊重する意味で「生涯学習」の表現をしたことにより、今日では生涯学習が一般に広く使われるようになっています。

 

ワラ細工に励む(会津高田町ふるさと文化ふれあい教室)

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4 生涯学習と学校教育

 

臨時教育審議会の答申の中では、「生涯学習体系への移行を目指して、従来の学校教育中心の考え方を改め、二十一世紀のための教育体系を総合的に再編成すべきである」との提言がなされています。

この提言に至った背景として、現行の学校教育体系の肥大化に伴う弊害や、人々の学習意欲など学習需要の新たな高まりが挙げられています。こうした従来までの学校中心の考え方を改めるに当たっては、まず、学校教育においては、自己教育力の育成に重点を置き、その基盤の上に社会教育において、自発的に自己に適した方法を選択できるよう援助することにより、生涯を通じて充実した学習が行われるものであるとの認識が必要です。

このように、本来、学校教育と社会教育はそれぞれ生涯教育の一環として、相互補完の関係にあるものであり、特に学校教育は生涯教育の基礎となる部分において、児童生徒に対し学習への意欲を喚起し、また、学習の仕方を習得させるとともに、それらを生かすことのできる心を育てる重要な役割を担っています。

こうした観点から、生涯学習と学校教育との関わりについて考えてみましょう。

 

(1) 学習意欲を育てる

児童生徒が生涯にわたって学習を継続していけるようにするためには、学校教育の場において、学習意欲の芽を育てておくことが大切です。即ち日ごろの学習指導において常に学習への動機付けを明らかにしてやることにより、学習への意欲を高めていくことが大切なことです。

近年、各学校において、児童生徒の能力、興味、関心等に配慮した教育課程の編成に創意工夫がなされ、体験的な学習により、学ぶことへの意欲を高めようとする教育の実践がなされるようになってきましたが、これを生涯教育の視点から、更に充実させていく必要があります。

そのためには、学校教育だけでの対応では困難であり、これを補充するものとして社会教育の機能が必要であるとの認識に立って、地域の社会教育施設との連携や地域の人材の活用など、学校外の教育機能を活用することによって目的の達成がより期待できるものと考えられます。

 

(2) 学び方を習得させる

学びたいという意欲はあっても、何をどのように学ぶかという学習の仕方を身に付けていなければ、学習の継続は不可能です。

従って、学校教育においては、教材を精選し、基礎的な知識や技能を身に付けさせるとともに問題解決的、あるいは探求的な学習方法を重視し、どのようにすれば問題を解決できるかという点について、学校外の教育機能も活用した体験的学習等を通して習得させることが必要です。

 

(3) 豊かな心を育てる

学習への意欲と学習の仕方が身に付いていても、それらを生かす心が育っていなければ今日の社会における様々な誘惑に打ち勝ち、学習を継続していくことは容易なことではありません。

この「心を育てる」ということについては、家庭生活に負うところが大きく、まず、家庭教育の充実が必要ですが、子どもの生活時間をみると学校での時間が意外に長いことに気付きます。このことからも、学校での特別活動等における指導も心を育てる上で大切なことであると言えます。

また、校内での特別活動にとどまらず、社会教育施設等を利用し、自然の中で伸び伸びと活動することによって

 

 

 


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