教育福島0146号(1990年(H02)04月)-040page

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を工夫していく必要がある。

(3) 興味・関心、見方・考え方の違いによる指導計画、指導過程を工夫してきたが、基礎・基本の定着を図る上では児童の学力差を考慮した指導計画が必要であり、そのためにコース別学習、TTなど研究を進める。

 

自然事象の中から、自ら問題を見つけ、解決できる理科学習の力を身につけた児童を育てるにはどうしたらよいか

郡山市立栃山神小学校 教諭 長島健司

 

一、主題設定の理由

 

これまでの理科の授業の実践では、自然事象の中から問題を見つけ、解決に向かって意欲的に取り組む児童の育成を目指して取り組んできたが、意識調査をしたところ、「実験などが楽しくできて、理科学習は好きだが、わからない内容もある」と答えた児童が多く、実験や観察などの体験を重視してきた一方で、小学生として必要な基礎的・基本的事項を身に付けさせる指導が十分でなかったことがわかった。

そこで、自然事象に進んで働きかけながら、理科学習の基礎的・基本的事項を習得し、学習の成就感を体得できる児童の育成に視点をおいて、本研究主題を設定した。

 

二、研究対策

 

研究主題に追るために、次の三つの研究対策を設定した。

(一) 児童が問題意識をもつ導入時の事象の提示を工夫して、授業を展開すれば、主題に迫ることができるであろう。

(二) 科学的な見方や考え方を身に付けさせるために、問題解決の前後の考えを記録させ、考え方の変容を図や文章で表現させれば、主題に追ることができるであろう。

(三) 授業での力試しや授業後の小テストを行って、個々の学習状態を把握し、基礎的・基本的事項の定着を図る指導を行えば、主題に追ることができるであろう。

 

三、研究の実際

 

ここでは、光の進み方の単元の「凸レンズの中の進み方」で検証した各研究対策の実際について述べる。

1 研究対策1の実際

導入段階で、児童一人一人に凸レンズと黒い紙を渡し、既習経験を生かして、紙を焦がす活動を十分行わせた後、焦げる距離の前後で、「光はどのように通っていたのか」を学習課題にして授業を展開した。

活動を通して、課題を設定したことで、児童からは「煙を使えば、光の道筋が観察できる。スリットに色をつければわかる」など多様な解決方法が出され、解決の見通しを具体的にもって追求している様子が観察できた。

このことから、既習経験のある活動を提示する方法は、児童に既習経験を生かした具体的な見通しをもたせることができ、主体的な活動を促す手だてとして効果があることがわかった。

 

凸レンズを操作して像の大きさや形の変化を確かめる児童

凸レンズを操作して像の大きさや形の変化を確かめる児童

 

2 研究対策2の実際

本対策では、導入の試行活動と解決活動の記録を比較して気付いたことを文章や図でまとめる指導を行ってきた。

その結果、レンズと焦げた紙の距離と煙やスリットで調べた光の集束及び拡散の記録の比較から、光がレンズの曲面で屈折や直進をしながら進み、一度集まって、また広がっていく現象に多くの児童が気付き、記録を比較して理解を深めていることがわかった。

このことから、試行と解決の活動を記録して、問題解決の前後の見方や考え方の変容を捉える学び方の指導は、光の進み方の性質を導く科学的な見方や考え方を育える手だてとして効果があることがわかった。

3 研究対策3の実際

本対策では、小学生として必要な基礎的・基本的事項を習得していく態度と能力を育成していくために、授業のまとめの段階と単元の指導計画に位置付けた四回の形成的評価を実施した。そして、その結果を正誤判定、観点別到達度、得点推移の変化、指導の成果と課題の四つの視点から分析し、児童の個人カルテを作成して、個々の児童に学習の到達度と学習の仕方を助言して、基礎的・基本的事項が身に付けられるように励ましてきた(資料1参照)

この結果、児童は、はじめ、力試しや小テストの回数が増えることに抵抗があったものの、「何回も繰り返し光の進み方を作図したり、要点を復習したりすると、よくわかるようになる」ということに気付いて、進んで授業に取り組んで、記録をきちんととったり、復習したりできるようになった。

このことから、個人カルテを作成して、児童一人一人にあった指導をする方法は、児童が理科の基礎的・基本的

 

 

 


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