教育福島0146号(1990年(H02)04月)-049page
博物館ノート
デコ座敷に伝わる
三春人形
張り子人形の優品
県内の古人形の中でも三春人形は、その代表格といえるものです。三春人形は和紙を張り重ねてつくられた張り子人形で、江戸時代以来デコ屋敷と呼ばれる五軒の家でつくられてきました。デコ屋敷は、現在では郡山市に含まれている西田
町高柴にありますが、江戸時代には三春藩の領内でしたので、ここでつくられる人形が三春人形と呼ばれてきました。現在では、デコ屋敷だけでなく、三春の町内でもつくられています。三春人形は、木型に和紙を張ってつくります。使
われる紙は楮の黒い皮が点々とついているようなあまり上等でない和紙で、これを数枚糊で張り合わせて「合わせ紙」をつくって使っています。木型に「合わせ紙」を張る時は、まず木型を油をしみこませた布でよくふき、湯にひたしてやわらかくした紙をちぎりながら張ってゆきます。乾いた時に紙が浮いてこないように注意しながら張り終わると、濃い糊を手のひらですり込みます。この後天日で乾燥させますが、乾くと刃物で紙に切れ目をつけて木型からはずし、膠でとじ、道具を取り付けると立体的な人形ができあがります。
この後胡粉を塗って乾燥させ、表面の凸凹を刃物で削り滑らかにします。この胡粉塗りを数回繰り返して下作りが完了します。ここまで終わるといよいよ絵付けで、製作者の個性があふれた表情が描かれます。最後に割木羽の台をつけて、張り子人形としては日本でもトップクラスの優品といわれる三春人形が完成します。
デコ屋敷は、単に人形をつくるだけでなく、「香具師掟書」等の文書が所蔵されているところが
ら、祭礼や市に店を出して売ることもしていたようです。「奥州三春太元明王祭礼之図」に描かれている露店で張り子人形を売っている人もそうだと思われます。
▲騎乗武者
錦祥女(右)と春駒(左)
「奥州三春太元明王祭礼之図」より
人形を売る店絵付け(橋本展司氏)
鯛釣り恵比須