教育福島0147号(1990年(H02)06月)-032page
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思い出雑感
湯田二三雄
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春雪まだ深きA小学校に赴任したのは、昭和三十五年の春であった。学生服に身をつつみ、身の回り品だけを片手に、長い路程をバスに揺られること約二時間、ふと着いたのは山間いの純山村地、そこまで村のジープが迎えに来てくれていた。そこからジープで一時間半、やっとのことでたどり着いた学校。この学校が私の、最初の修練の場となり、初めて児童たちの前に立った。あの緊張感は今でも忘れられない。「僕も教師になったか」六年生担任…。
授業で困ったのは音楽である。楽譜は読めない、オルガンは弾けない。そこでオルガンのわき板をたたきながらリズムをとり、なんとか音楽のような形を作るのが精一杯の授業であった。
次の年、村の本村から、大杉分校に勤務することになり、本村から分校まではもちろん歩きである。大きなリュックを背に、履き慣れないキャラバンシューズのいでたち。早朝村を出発し、御池峠(今はバスで行ける。)で昼食、七曲を下って夕方近くに分校へ。A先生が小学校一年生から三年生まで、私が四年生から中学三年生まで十二、三人を担任することになった。非常ににぎやかな学級であり、どの教科をどのようにして学習させればよいのか、とんと見当がつかない。「教育とは何だろうか」と問う日々であった。
雪解けの沢は、イワナがよく釣れる。子どもたちは釣り上げたイワナを私に売るのであるが、その値段の付け方がちょっと変っている。魚の頭から尾の先までを物差しで測り、一センチメートル何円と言うのである。魚をセンチメートル単位の値段で買うのは、私も初めての出来事である。「子どもたちには今、何が必要で何をどう教えるべきか」と戸惑いの連続。
電気がなく、夜には、石油ランプとカーバイトの生活である。暗いが工夫次第で結構楽しい生活が送れる。
秋になると、野山は色付き、素晴らしいパノラマを展開してくれる。そのパノラマにつつまれながら、来春五月までの食糧、日用雑貨の秋上げが始まる。学校は、一週間程秋上休みに入る。小出の業者が奥只見ダムを舟で渡り、ダムサイドで取り引きをする。子どもたちに混じって私も自分の荷を背負って運ぶのである。片道二、三時間は歩いたであろうか。休みとはいえ、まことに苦しい秋上げ休みとなった。
子どもたちには、素晴らしい勤労意欲があり、愚痴一つ言わず、黙々と己の仕事を成し遂げる。
積雪時になると子どもたちは、スキー通学となる。私にとっては、村から月一回の新聞や手紙がせめてもの慰めである。雪と闘う子ども達の目は冴え、肉体は躍る。
そんな振り出しから三十年。社会の多様化に乗じ、世の中も生徒も変わりつつある今、より教育の原点を見極めるべく、日夜の教育活動に精進する事を改めて誓う今日この頃である。
(只見町立朝日中学校教頭)
−あんない−
舞台芸術の公演
青少年芸術劇場
青少年を対象に、文化庁が派遣する優れた舞台芸術の公演を次のように二市で開催します。
○二本松市(二本松市民会館)
八月十日(金)
オペラ (財)日本オペラ振興会
○須賀川市(須賀川市文化センター)
八月十日(金)
能楽 能楽協会
家庭劇場
本格的な文化施設を有しない地域の舞台芸術に接する機会の少ない県民のために、家族ぐるみで鑑賞できる優れた公演を十四町村で開催します。
○音楽公演
「ミュージカル・アカデミー ピエロの大行進」 出演 ミュージカル・アカデミー
10/2 湯川村
10/3 小野町 岩瀬村
10/4 塙町
○児童劇公演
「裸の王様」 出演 楽劇団 いちょう座
9/10 只見町
9/11 昭和村
9/12 新鶴村
9/13 矢吹町
9/18 滝根町
9/19 岩代町
9/20 月舘町
9/21 飯野町
なお、鑑賞希望等を含めて、詳しくは各開催町村の教育委員会にお問い合わせ下さい。
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