教育福島0147号(1990年(H02)06月)-033page

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(二)反省と今後の取り組み

最近の高校生は、ともすれば目先の利害や安易さを求めて、自分の立場を見失い、問題行動に走ったり、自己規制の歯止めが利かなくなって、校則違反を繰り返すなど、生徒指導上の問題は尽きることがない。

個性の異なる一人一人の生徒の自己実現のために、援助や指導をすることにより、自律的に学校生活を過ごさせることは、本校生徒指導の要締である。「自律性を高めるための生徒指導」をテーマに研究に取り組み、各種の意識調査から、生徒・保護者及び地域社会の実態を把握でき、これまでの指導の在り方が確認されたり、今後の生徒指導の対策に役立つ貴重な資料として活用できることなど、大きな収穫があった。

本研究の成果として、次のようにまとめることができる。

(1)全職員が生徒指導上の諸問題に共通の意識をもって取り組み、その解決策に、それぞれの立場で知恵を出し合った。

(2)服装や頭髪等の指導に対する保護者や地域の方々の関心が高く、生活規律の面でよい印象を与えている。生徒自身は厳しい指導だと思いながらも、むしろ、それを当然のこととして受け止め、好高生としての自律的な行動の支えとなっている。

(3)生徒会や各種委員会の活動が活性化し、盛り上がりのある生徒会行事が展開された。これらの生徒の活動の場に対する援助と指導は、本研究二年目の、テーマに迫る重点事項として取り組んだものである。

成果の要因は、次のようなものである。

1)「いま、好高のためにできることは何か」のスローガンを掲げ、執行部の役員が全校生に呼びかけたこと。

2)問題の解決のために、それぞれの組織が連携を密にして機能的に運営されたこと。

3)体育祭の種目決定を各HRのアンケートにより決定したこと等、行事に全校生が参画するような方法を取り入れたこと。

4)行事終了後のアンケート実施により、生徒の意識を次回の行事につなぎ止めたこと。

5)生徒会活動が、校内に止まらず地域社会にまで広がり、地域住民との善隣関係が促進されたこと。

6)これらの行事の様子や結果を、出版委員会や放送委員会が速報版を出すなどして、行事への関心を高めたこと。

7)執行部の役員が、綿密な計画を立て話し合いを重ね、問題点を解決していったこと。

(4)特別指導の件数と人数が激減した。

(5)保護者や地域の方々の本校に対する関心や期待が、予想以上に高いことがわかった。

(6)生徒と教師との親近感が、より深まった。

生徒の発達段階を考慮しつつ、他律的な生活から自律的な生活へとその変容を図る指導には、自律心を引き出す基礎条件が必要となる。本研究で認められた条件とは、「自信を持たせること」「誇りを持たせること」「教師との信頼関係を保つこと」であった。

「生き生きとした学校生活」は、教師が与え得るものではなく、生徒の自律性に基づく行動によって生み出されるものであろう。生徒が自己を啓発し、自律性を養い、自己実現のために努力するよう援助と指導を継続する必要がある。

生徒が学校生活のあらゆる場面に自信をもって取り組み、“やる気”を起こす時が「自律性の確立」や「自律性の高まり」となり、意識の変容へ結びつくものとの確信を得た。

「優しく、厳しく」を合い言葉に、「いつでも、どこでも、あらゆる場面で生徒指導を」と全職員が取り組んだ二か年の実践研究であるが、まだ不十分な点も多い。ご批判をいただきたい。

 

児童生徒の内面を重視した生徒指導

−養護教育諸学校−

 

一 生徒指導の意義

生徒指導は、一人一人の児童生徒の人格を尊重し、個性の伸長を図りながら、社会的な資質や能力、態度を育成し、社会の一員として自己実現できる力を培うことをねらいとしています。

そのためには、児童生徒が自己をありのままに認め、自己に対する洞察を深め、それらを基盤として、自らの追求する目標を確立していく力を養うことが大切です。それは、児童生徒が、自主的・自発的な活気あふれる日常生活の中のそれぞれの場で、自らの選択により実行し、自らが責任をもつという機会を多く経験することにより養う

 

 

 


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