教育福島0147号(1990年(H02)06月)-035page
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行するというのです。「給食の時間がわかり、そのための準備ができない」という目の前の生活だけに注目するのではなく、それを様々な場面における行動と重ねてみると、条件さえ整えばできることがいくつかあることに気付くはずです。その中から子どもの実際の姿を知ることができ、指導の手がかりもつかめるはずです。
子どもの実際の姿を理解するには、子どもが示す行動を障害のせいにしたり、困ったこと、なんとかして直さなければならないという見方をしたりするのではなく、子どもができるものを一つ一つ広げ、応用できる力を身に付けさせるという見方が必要です。
(二)児童生徒とのかかわりと援助
子どもたちの実際の姿が明らかになると、今度は、どうやって生活の拡大、社会性の伸長を図っていくのかということになります。
一人で砂場で砂遊びをしているD君、小さな入れものを一つ持って、もう一つの入れものに砂を流し込む、一つが空になるとまた同じやり方を繰り返す。同じことの繰り返しは、やがて飽きてくる、そんな時、教師が形の変わった入れものを差し出す、すると、D君は教師の差し出した入れものを使い、さっきと同じ動作を繰り返す。今度は、いくつかの入れものを少し離れた位置に置く、D君は、その中の好きなものを取り同じ動作をする。そこでは、小さすぎて砂がこぼれてしまう入れもの、入口が狭くて、うまく砂が入っていかないもの等、D君は入れものの形の違いによって表われる現象が違うことに気付いていくのです。それは、ほんのちょっとした環境構成の変化ですが、D君にとっては、行動の世界を広げる大切なステップだったのです。
教師は、子どもの意向に沿うようにちょっとだけ援助をすることで、子どもの世界は拡大し、より積極的な活動に展開するのです。
子ども自身の行動が徐々に広がり周りの物や人に目がいくようになると、社会性を養う意味で、より広い環境にかかわる機会を多く設けることが大切です。自分を受け入れ、理解してくれ、自分の生活の拡張を少なくとも邪魔をしない教師がいる時、子どもは、教師の導きによって集団を遠くからながめるようになり、その距離は少しずつ短くなり、ふと気が付くと、傍らで音楽や友達の動きに合わせて体を揺らし、指先をピクピクさせているというケースを見ることがよくあります。
集団へ参加する気持ちは、子ども一人一人によってみんな違います。集団生活の中でも十分個の起こす行動の理解と個に応じた援助があって、初めて社会性を育てることができるのです。
四 指導組織の活性化
生徒指導は、学校の教職員全体が共通の理解に立って行うことが最も効果的です。
そのためには、主任を中心とした生徒指導部の活発な活動がまず望まれます。画一的な指導ではなく個に応じた指導、一人一人の児童生徒の内面に迫る指導に向けて様々な資料を収集し、より良い方向へ、何をどのように改善すべきかについて協議し、生徒指導部として全校の教職員に、問題提起していく等の積極的な姿勢が必要です。
生徒指導部の教師が問題意識をもち、例えば、生徒指導についての定例協議会を設けるとか、現職教育の中で、生徒指導に関する研修を位置付けるなどして、全校の共通理解を深めつつ、全校が一丸となって生徒指導に取り組むことが、指導の活性化を図る上で重要なのです。
以下に示す事例は、心身の障害の程度が重い児童の行動理解と、一人一人が生き生きとした集団活動を展開するための指導、援助の在り方についての実践事例です。
障害の重い子の生徒指導
−心身の著しい状態変動を呈するS児への教育的かかわり−
県立平養護学校
一 はじめに
障害の重い子においては、今、彼がどのような状態にあるかによって、その行動の様相が全く異なるものになったり、また環境条件や体調の変化によって状態も容易に変動するといったことが、しばしば見受けられることがある。
こうした子どもたちの個々の行動を把握すると同時に、その子の心身の状態の変化を見極めつつ、教育的かかわりをどう工夫していくかが、指導者側の課題となってくる。
そこで本稿では、心身の著しい状態変動を呈するS児へのかかわりを通して、この課題について考えてみたい。
二 指導事例
(一)対象児の紹介
1)対象児
S児 男 昭和五十九年生まれ。
2)家庭状況
父・母・祖父母の五人家族で、本児は家族全員にかわいがられている。日常生活の介護は父母が交替で行っている。
3)生育歴
(胎生期)
特記事項なし。母親の状態は良好であった。
(周産期)
在胎月数は十か月であったが、発生微弱陣痛で難産であった。仮死状態で
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