教育福島0147号(1990年(H02)06月)-048page
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養護教育センター通信
共同研究の紹介
心身障害児の指導援助のための実態把握の方法に関する研究
−実態把握の視点とその方法2−
一、はじめに
本研究は、昭和六十三年から三か年計画で行っている研究である。
盲・聾・養護学校や特殊学級に入級してくる子どもたちの障害が年々重度化・重複化・多様化の傾向が増している今日、実態把握や指導援助について検討を進める場合、その視点と方法は、軽度の障害のある子どもから重い障害のある子どもまでの幅広い対象に適応されるものではなければならない。
そのため、教育現場における教師の実態把握に対する意識やその方法を知るとともに、心理学を中心とする学問的な研究の動向をつかみ、様々な障害の種類、程度を越えて適用可能な実態把握の方法を確立しようとした。
二、第一年次の研究(昭和六十三年度)
心身障害児の実態把握の方法や把握した実態を基にした指導援助に関する実情をとらえるため、調査用紙を作成し、県下の盲・聾・養護学校、小・中学校特殊学級の学級担任三百六十九名を対象に実態調査を行った。また、心身障害児の実態把握と指導援助の在り方に関しての理論研究を行った。
その結果、実態把握における行動観察の重視の傾向が読み取れた。また、教育的かかわりの状況における子どもの能動性を重視した実態把握をすることが、子どもと教師の両者の関係が充実したものとなるものだということが分かった。
三、第二年次の研究(平成元年度)
第一年次の調査結果等を基に、指導援助に生かす行動観察の理論研究を重ね、関与的行動観察のための行動記録表(試案)を作成し、事例への適用を試みた。
1、関与的な子どもの見方
1)関与的な実態把握
子どもを主体的な存在と考え、子どもとかかわり合いながら、子どもの気持ちに共感し、行動に寄り添う形で子どもを親和的、総合的に把握しようとするのが関与的な実態把握である。これはまた、子どもの内面だけでなく、子どもを取り巻く人やものを、その子どもがどう受け止めているかを推測していくものである。
2)関与者の影響
子どもと教師のかかわり合いの中で子どもはそばにいる教師に、自分を自由に行動させてくれるのか、一緒に行動してくれるのかといったような心配を抱いているかもしれない。このように教師は、意図する、しないにかかわらず、観察対象である子どもになんらかの影響を与えている。そのため教師が子どものよりよい行動や考えの拠点となっているかどうかは、教師の大事な資質として見逃せない側面である。
3)関与的な人間関係
教育実践の場で、子どもと教師の間にしっくりした人間関係ができていることがなによりも必要である。
2、マクロな見方とミクロな見方
一般に、子どもの行動をマクロに見ているときは、まとまったものと見ることができるのだが、ミクロに見て行くとばらばらなものになってしまいがちで、総合的に子どもを理解することは難しい。
しかし、子どものマクロな行動もそれに及ぼすミクロな条件は何であるかを追求していくことによって、子どもの行動を多面的、本質的にとらえることができる。
通常の教育を受けている子どもは、言葉を交わすことによって、自分の気持ちや考えを伝えることができる。しかし、心身障害児の場合はそれが難しいことが多く、そのため、教師は子どもの視線、手の動き、指差し、顔の表情、声の質、人との距離といった言葉以外のミクロな行動を重視し、それらを子どもの心の表現ととらえ、子どもが感じている状況を総合的にしかも鋭敏に受け止め、子どもにかかわるようにしていかなければならない。
3、具体的な実態把握の方法
1)行動観察の視点
行動観察をするにあたって、「子どもの能力・特性というものは、子どもと教師の関係として見てとることができる」「子どもは自己及び周囲の影響を強く受けている」「子どもの置かれている状況に適したかかわりをすれば、子どもは能動的、主体的に行動する」ということを念頭に入れておきたい。
実際の指導場面では、教師は子どもの行動に常に何らかの関与をしているので、教師のかかわりを見ることなしに子どもの行動だけを記録していくだけでは、本当に観察しているとはいえない。そこで、「子どもが現在どのような状況にあるのか」「教師はそれに対してどのようなかかわりかたをしているのか」という、子どもと教師の両方に目を向ける必要が出てくる。
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