教育福島0148号(1990年(H02)07月)-024page

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る。彼等は、遊びが終わり帰宅する前に反省会を開き、一人一人が皆の前で発表する。もし、掟を破ったとしたならば即座に裁判となり、年長者が裁判官を務め、弁護する者と批判する者に分かれる。しかし、刑罰はなく悪いと年長者が決断すれば、掟を破った者は「無念でござる」と一人一人に謝罪すれば許されるのである。

「ならぬものは、ならぬ」の頑固な教育を受けて育つ会津人にとって、他人に頭を下げることは、とても恥ずかしいことであり、容易に掟を破ることはなく、また、謝ればそれですむなどという安易な考えは、持っていなかったそうである。

僅か三歳ぐらいから五、六歳くらいの幼い子供たちから成る集団の話である。

このことは、教職十二年目を過ごしている私にとって、もう一度教育の原点に立ち返えらせられた内容の話でした。

今日の生徒を見ていて、

生徒の自主性とは何か。

教師の指示を忠実に守るが、その範囲から更に飛躍しようとしない生徒が多くなって来ている原因はどこにあるのか。

リーダー育成のために教師は、何をすべきなのか。

好ましい集団を作り上げるためにはいかにすべきなのか、等々。

会津若松城下で反省会を開いている武士の子供たちが我が学級の生徒たちにオーバーラップして考えさせられました。しかし、その解決策はみつかっていないのが現状であり、今後よ試行錯誤しながら教師の道を歩んでいくことと思います。

思い返えせば、十二年前の教員採用試験の論文の中に「してみせて、言ってきかせて、させてみて、ほめてやらねば人は動かず」という山本五十六の言葉を教員として持ち続け、実践していきたいなどと生意気な事を書いたことがありました。現在私は、体育教師として「してみせて」の部分で多少苦しくなって来ている今日ですが、幸運にもこのような機会を与えていただいたので、再度、原点に立ち返り、足元をみつめて教育に専念していきたいと思います。さらには、子供のためになり、子供が主役となる教育活動を第一に考えながら、一日一日を大切に努力していきたいと思っています。

(本宮町立本宮第一中学校教諭)

 

大役

伊藤綾

 

任されたらしいということとい私につとまるかという不安だけがのしかかった。

 

相馬高校の出版局の顧問となったのは、今年の四月である。新任で右も左もわからない私に、更に「出版局」という耳慣れない言葉がとびこんできた。つまり新聞部のことで、六月の県大会開催校に当たっていると説明を受けたのだが、「新聞部」「県大会」といっても何をすれば良いのか全く見当がつかなかった。ただ漠然と、大役を任されたらしいということとい私につとまるかという不安だけがのしかかった。

さて、本格的に出版局に顔をだし、間近にせまった県大会の準備にとりかかると、やはり身に余る大役をひきうけてしまったという思いが次第に強くなっていった。県内の各校にアンケートをとり、調査書を送る。それをもとに、大会の日程および内容を決定しい要項に載せる原稿を依頼し作成していく。失敗の連続だった。締切期日を一か月も間違えたアンケート用紙をそのまま送ってしまったために、訂正の連絡に余計な時間を費してしまった。それでなくても時間が少ないというのにこのミスでかなり遠まわりをしてしまったのである。その他にも、発送したはずの文書が届かなかったり、参加校の名称を間違えてしまったりもした。恐らく各校の新聞部には、かなりの御迷惑をおかけしたはずである。そのたびに、「もう少し新聞部についての知識があれば」「もう少し自分に力があれば」と悔まれた。落ち込むこともしばしばだった。そんななか唯一の救いだったのは、部員が思った以上にしっかりしていて着実に仕事をこなしていってくれたことである。時には、「そんなに焦らなくても大丈夫だよ、先生」「私たちに任せておいて下さい」などとたのもしい言葉をかけてくれたりもした。

そうこうしているうちに当日を迎えどうにか終了させることができたのだが、やはり自分のいたらなさに後悔の念ばかりが残った大会であった。そんな悔やむ気持ちでいっぱいの私の所に、次のような一通の手紙が届いた。「先生が突然のように連盟長校を引き受けて、あのように立派に全うされた姿は、私にとって驚きであり、とてもよい刺激になりました。忘れられない三日間となりそうです。・・」参加した某高校の顧問の先生からである。儀礼的な礼状ではあると思うが、それまでの辛さが吹き飛んでしまうぐらい嬉しい手紙だった。私にとっても忘れられそうにない大会なのである。

まだ未熟な私の初の大役を、周囲の先生方はかなり心配して見守って下さっていたようである。私の気がつかない部分でも多くの御迷惑をおかけしたのだろうと思う。先生方のご好意に

 

 

 


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