教育福島0148号(1990年(H02)07月)-041page
![]() ![]() ![]() |
![]() ![]() |
(一) 単元を通して体験的な学習活動を位置づけた事例
1 小単元名 明治からの世の中(日本と世界の動き)
2 小単元の目標、指導計画 (略)
3 取り入れた体験的な学習活動
つかむ段階ではノルマントン号事件の劇化、調べる段階では年表づくり、まとめる。広める段階では歴史新聞づくりなどの活動を取り入れ、児童の積極的な活動の場を位置づけ、個性的な学習活動が展開できるようにした。
(1) つかむ段階での体験的な学習活動
当時の人の立場に身を置き、事件についての見方をはっきりさせるために劇化を取り入れた。表現の上手下手はともかく、その子なりの表現の仕方で楽しく活動することができた。また、一人一人の見方・考え方を知ることができ、個性を生かすことのできる学習活動であった。
(2) 調べる段階での体験的な学習活動
不平等条約改正実現の経過を、日本の国力充実などと関連させてとらえさせるために、年表づくりを取り入れた。単なる事実の記入だけではなく、事実についての説明や自分の感想なども書くようにし、説明的な年表づくりにした。そのため、条約改正までの経過を具体的にとらえることができた。しかし、年表づくりそのものが目的になってしまった児童も見られたことや、時間が予想以上にかかることは問題であった。
資料2 体験的な学習活動を取り入れた実践
![]()
(3) まとめる・広める段階での体験的な学習活動
学習したことを自分なりに自由な形式でまとめるために、歴史新聞づくりを取り入れた。新聞の内容は、学習した事項の中から自由に選んでまとめることとし、書く観点を絞ってテーマのはっきりした内容になるようにした。また、記事には必ず自分の意見を入れ、絵や図、マンガやインタビューなどを入れたりして「世界に一つしかない新聞」を書くようにした。個性的な作品が多く見られるようになった。
六、児童の変容
こんな学習をしたいという要望を言う子、社会科に関する資料や新聞記事を持ってくる子、歴史の本を好んで読む子、自由研究で歴史について調べてくる子などが増え、社会科に対する興味・関心の高まりが見られるようになった。
また、社会科の学習の仕方に対するアンケートでは、教師側で進める授業ではなく、体を動かし自ら学んでいく活動を好んでいる児童が増えてきている。この点からも体験的な学習活動を多く取り入れていくことの必要性が感じられた。
七、研究のまとめ
(一) 体験的な学習活動を取り入れることは、大変時間や労力がかかり、取り入れた内容や方法に問題を残しながらも、一人一人の個性をより生かしていくことにつながった。
(二) ゆとりある体験的な学習活動を展開するためには、小単元あるいは単元だけでの精選では不十分で、年間指導計画の検討にたちもどり、見通しを十分に持つ必要がある。
(三) 体験的な学習活動は、児童にとって活動すること自体が優先してしまい、何のための活動であるか忘れがちであるので、常に児童の問題意識を明らかにさせた上で活動させなければならない。
(四) 一人一人の個性を生かしていくためには、日頃の授業における取り組み方について十分把握し、学習の過程を重視する必要がある。さらには授業だけではなく、子どもたちの生活の中から、一人一人の取り柄や良さを見つけることが大切である。
八、今後の課題
(一) 体験的な学習活動の内容や方法について再検討するとともに、どの段階でどのように位置づけるかを考えていきたい。
(二) 興味・関心別選択学習(コース別学習)も取り入れていきたい。
(三) 児童の変容の効果的な把握の仕方や、指導と評価の一体化の在り方について考えていきたい。
(筆者は平成二年度より福島大学教育学部付属小学校勤務)
![]() ![]() ![]() |
![]() ![]() |