教育福島0149号(1990年(H02)09月)-033page
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○ 職業教育を発展し、現実度の高い学習の場を企業等に求め、実際の生産活動に参加させ、社会的、職業的な知識、技能等を身につけること
○ 職場実習を通して、保護者や企業一般社会に対して、心身障害児についての理解・啓発を深めること
そして、望ましい人間関係を育て、仕事への意欲、責任感、作業態度、安全、生産性等のほか、社会人としての望ましい態度や行動について学習します。
なお、職場実習の評価については、学校、家庭側の評価だけでなく、特に企業や作業所からの「卒業後、社会人として何を身につけ、育てていく必要があるか」という視点からの評価が大切です。そして、問題点を学校の教育活動全体を通して指導し、次の職場実習の機会にそれを確認していくのです。
以下には、社会参加、自立を目指した教育を推進する特殊教育諸学校における教育について具体的に紹介します。
社会参加・自立を目指した教育の実際
一、聾学校における教育
県立聾学校
(一) 聾学校の概要
聾学校は、「聾者に対して、幼稚園小学校、中学校又は高等学校に準ずる教育を施し、あわせてその欠陥を補うために必要な知識技能を授けることを目的とする」と学校教育法第七十一条で定められていますがここでの聾者とは学校教育法施行令第二十二条の二で、
○ 両耳の聴力レベルが、百デシベル以上のもの
○ 両耳の聴力レベルが、百デシベル未満六十デシベル以上のもののうち、補聴器の使用によっても通常の話声を解することが不可能又は困難な程度のもの
と規定されています。
本県では、郡山市に幼稚部、小学部、中学部、高等部(産業工芸科・金属工業科、被服科、普通科)を置く県立聾学校が、福島市、会津若松市、いわき市にそれぞれ幼稚部、小学部のみの分校が設置されています。これらの学校では、平成二年五月現在三歳から十八歳までの聴覚障害幼児、児童、生徒が百二十一名学習しています。
幼稚部は幼稚園、小学部は小学校、中学部は中学校、高等部は高等学校にそれぞれ準じた各教科、道徳、特別活動のほかに、養護・訓練の学習を行っています。養護・訓練とは、障害の状態を改善、克服して心身の調和的発達の基盤を培うものであり、聾学校では、補聴器を装用しての聴覚学習、日本語の言語体系の習得、コミュニケーション技能の習得と改善、障害に対する心理的適応等を図る指導を行っています。
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校外学習「いちご摘み」へ出発(幼稚部)
(二) 社会参加、自立を目指した指導
聾学校が、昭和五十八年に、成人聾者と、彼らを取りまく身近な人々に対して行ったアンケートと面接調査の結果、「望ましい自立像」とは、聴覚障害者、健聴者の区別などはなく、「人間」としての自立であるというものでした。
聾学校を卒業した子どもたちは、大学や他の聾学校の専攻科等へ進学する者、企業へ就職し、自活への一歩を踏み出す者と様々です。平成元年度は、高等部の卒業者八名のうち大学進学一名、一般企業への就職者七名となっています。進学選択は、ことば(日本語の体系にそった音声言語、あるいは、文章表記により受容したり、表出したりすることのできることば)によって意思疎通や思考をする力、学力等との関係から限定されてきますが、子どもたちは、多くの場合、先輩の様子を手掛りに選択するようです。
聾学校の子どもたちは、素直でよく仕事をするが、紋切りの型のパターン化した行動が多く、主体性がないと、しばしば言われます。これは、入学時からほとんど変わらない小集団であることもさることながら、世話する大人が必要以上にことばの指導にこだわり過ぎ、どうかすると世話を焼き過ぎる結果となり、自分で判断して、実行するという経験を奪ってしまっているためと考えられます。
そこで、聾学校では、児童会、生徒会等の係活動で、子ども同士で考え活動することにより、自分がもてる力をフルに発揮して、社会に参加することの大切さに気付かせるよう指導に当たっています。また、小体連、中体連、高体連、高文連への参加や、近くの保育園(幼稚園)、小学校、中学校、高等学校との交流教育の実施により、他の学校の子どもたちの考えや行動を知るとともに、今の自分を振り返り、自分のおかれている立場を見つめなおし、やるべきことを自分で決め、実行しよ
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