教育福島0149号(1990年(H02)09月)-042page
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研究実践
リポート
重複障害児の生活意欲を高める指導
−日常生活の指導を通して−
県立石川養護学校 教諭 川勝直子
一、はじめに
食事の目的は栄養の補給、健康の保持増進等にありますが、大切なことはおいしく食べることを通して、家族や級友、教師との人間的な触れ合いを深め、精神的な充足感をもたらすものであることです。
このことは、精神薄弱児にとっても大切なことですが、障害の特性により、指導上様々な困難があるというのが実情です。そこで、本校のT・H児の食事指導を通して、食事への意欲を育てるとともに、生活全般に渡って意欲的活動が展開するようになることを期待して本研究に着手しました。
二、T・H児(小六、女)について
○胎生期には特に異常なし。
○仮死状態で生まれ未熟児であった。
○発育は遅れ、歩行は困難な状態で訓練を受けていた。
○独歩が可能になって間もなく、火傷を負い、右手等に障害が残る。
○重度精薄+肢体不自由と診断。
食事等の様子は次のとおりです。
○右手指の欠損のためスプーン等が持てず全介助。
○コップの水はなんとか飲めるが、ストローでは無理。
○そしゃく力、えん下力等が劣る。
○偏食が激しく、「海苔巻ご飯」や「麺類」、「えびせん」などは手で口に運ぶが、他は無関心でいる。
○衣服の着脱は全介助。
○排泄は尿意等を告げられず、定時排泄、(座位保持困難で洋式使用)床に座ったままでの失禁も多い。
○歩行は不安定で、じっとしてうつ伏せになっていることが多い。
○喃語様の発声が多いが、ごく簡単な指示は理解できる。
三、かかわりの実際
(一)かかわりの方針
前述したように食事は生命活動の源であるため、本児の場合はまず何よりも適度の量を摂取し、健康な体づくりをすることが大切であると思われます。そこで食事指導を中心に取り組むこととし、次のような方針を立てました。
1)摂食行動の改善を図り、一定の食事量の確保に努める。
2)排泄時間の定着化を図るなど、生活のリズムを整える。
3)健康の保持増進を図るとともに、身体諸機能の向上に努める。
4)探索活動を促進させ、興味・関心の拡大を図る。
(二)かかわりの手順
本校『日常生活の指導』研究班で一昨年度作成した、経験要素表に基づき問題を把握し、変容の度合をチェックしながら進めました。
(三)かかわりの実際と経過
実際のかかわりの方については、更に次のような点に配慮しました。
1)食事の技術の習得より雰囲気を重視する。
2)施設との連絡を密にし、特に食事量は三食を通し適量になるように努める。
3)身体諸機能の向上を図るには、規則正しい生活が基本であることから、本児独自の日課表を作成する。
4)排泄の際には、言葉かけと同時に身振りサインを導入、更にトイレに音楽を流し楽しい雰囲気をつくる。
5)歩行訓練の際、意欲的に動かすことができるように本児の好きな音楽を強化因子として用いる。
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先生といっしょに楽しく食事
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