教育福島0149号(1990年(H02)09月)-043page

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かかわりの経過は表に示したとおりです。

 

(四)かかわり後の本児の変容

1)食事

○意欲的に食べるようになり、眠ったふりをすることがなくなってきた。

○偏食が少なくなり、毎日の食事量にむらがなくなってきた。

○スプーンを持たせてもあまり嫌がらず、僅かの時間ではあるが自分で握っていることもあった。

○食物がうまく口に入らないと、何とかして食べようと口を動かすようになった。

2)着脱

○上衣を脱ぐ時、言葉掛けにより両手をあげ、介助に協力しようとする姿勢がみられるようになってきた。

3)排泄

○食事量の増加に伴い水分摂取量も多くなり、排尿回数も増え定時排泄が定着化してきた。(十時半、十二時半)

○尿意が感じられるようになったのか、トイレに行くのを嫌がらなくなり、またある程度我慢できるようになってきたと思われる。

4)その他

○覚醒の状態が長く続くようになり、行動が活発化してきた。

○自分から好みの場所に移動したり、好きな絵本を選び出してくるなど、興味・関心が拡大され、自発的行動が多くみられるようになってきた。

 

四、経過のまとめと考察

 

以上の経過をまとめてみると、経験要素表にチェックした段階では食事の技術的な面では顕著な進歩は認められません。しかし食べることに意欲を示し食事量が増えたことにより、排泄のリズムが整い、身体諸器官が円滑に機能するようになってきたと思われます。

このように日常生活の指導は、自己の生命を維持し健康で自立的な生活を送るために必要な身辺の処理能力や、基本的生活習慣を身に付け、食事・着脱・排泄等の技術を習得するだけでなく、それらの指導を通して家族や教師との人間的な触れ合いを深め、その触れ合いの中から毎日の生活を豊かで楽しいものと感じさせ、生活に意欲を持たせることが大きなねらいであると言えます。本児の場合、外界に対する興味・関心が増し、主体的にかかわろうとする態度が育ちつつあるので、今後は本児の意思を尊重しながら更に細かな指導プログラムを作成し、適切な言葉かけ、励まし、賞賛の言葉を添え、適度な援助をしていきたと考えます。

また家庭や施設との連携を密にし、一貫した指導に努め、そして本児の日々の生活を豊かなものにし、どんなささやかなことでも、本児が自分の力で挑戦し乗り越え、「やったー!」という成就感を味わうことができるようにさせたいものと考えています。

 

表 かかわりの経過

 

かかわりの方針及び実際本児のようすその他の行動
8月〜

○同一介助者により、できるだけ安定した状態で食べさせる。

○むらなく食べさせることができるよう、食事量の確保に重点をおいて指導する。

○食べることが楽しいと感じられるように、雰囲気作りに心掛ける。

○夏休みあけのせいか食欲がなく、ほとんど食べようとしなかった。(8.23)

○御飯は好きなのでよく食べた。満腹になると首を振って意思表示することができた。(8.24)

○食事前発作あり。食欲もなくパンを吐き出してしまう。(9.11)

○食欲旺盛で、カレーライスをほぼ一皿食べた。ぶどうも食べた。(9.21)

○初めて給食を全量食べることができた。(10.19)

○登校後すぐには教室に入らずじっと立ち止まっていた。どこに行こうかと考えているようであった。(8.23)

○以前のように眠り込まずに、眼を大きく見開いて教師を見ていることが多くなった。(8.24)

○かぼちゃの煮物の入ったどんぶりを見て喜んだが、中身を見てかぼちゃと分かるとそっぽを向いてしまった。(8.26)

○「ナポリタン」という言葉を聞いて、手を叩いて喜んだ。(9.18)

○T商での買物学習の時、ジュースやアイスの入っている冷蔵庫の方に自分から寄って行った。(9.20)

○砂利遊びが好きになり、砂利がしいてある場所に向かい自主的に移動する。2段の階段をお尻でずって降りることができるようになった。(9.30)

○中庭に出る戸を開ける気配で立ち上がり、出ていこうとする。(10.7)

○芋煮会の時、かまどの火を興味深く見ていた。何度引き離してもすぐに寄って行った。(10.12)

○中庭に出ようとして立ったまま階段(2段)を降りることができた。(10.17)

○自分の意を体全体で表そうとするようになり、体を硬直させて嫌がったり座り込んだりする。(10.28)

11月〜

○手で食べられるものは、手づかみでも自分で食べさせるようにする。(みかん、海苔巻御飯、えびせん等)

○必ずスプーンを握らせる。また介助により2口〜3口は自分の手でスプーンを握り食べさせるようにする。

○スプーンを持たせて食べさせようとすると、口に入れる時に顔をそむけ嫌がった。(11.22)

○焼きそばは好物なので、スプーンにのせてやると嫌がらずによく食べた。(11.24)

○おやつのかっぱえびせんを手に持たせると、同に押し込むようにして食べることができた。(11.24)

○御飯を味つけ海苔で巻いておくが自分から手を出そうとはしない。持たせてやるとすぐに口に入れ、7個食べた。(11。28)

○みかんを手で持って食べた。(12.6)

○スプーンを少し自分の力で持つことができたので、もう一度持たせようとすると、嫌がって落としてしまった。(12.15)

○給食後すぐにトイレに座らせると、待っていたかのように排尿があっだ。我慢していたように思われた。(11.8)

○砂利遊びのせいか、右手指の関節が大分開くようになってきた。(11.18)

○自席を立ってロッカーの所に行き、好きな絵本を持ってきたり、うちわを手にとったりして積極的に物にかかわろうとしていた。(12.7)

○好きな絵本を持って来て、床に置いて眺めていた。(12.13)

○作品袋を見せると、自分から手を出していた。(12.22)

1月〜  

○風邪で欠席。帰省していることが多かったため、規則的な指導に取り組むことができなかった。

○「豆まき」の歌にあわせてパネルシアターをやると、じっと見ていた。(1.31)

○着替えの時、「万歳しなさい」という言葉かけで手を上げることができた。(2.6)

○好みでない本を持たせてもすぐに落してしまう。(3.3)

 

 

 


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