教育福島0149号(1990年(H02)09月)-048page
教育ひと口メモ
就学義務の猶予・免除と編入学時の学年認定
養護教育課
就学義務の猶予・免除
教育を受けることは、子どもにとっては権利であり、保護者は子女に学校教育を受けさせる義務(就学義務)を負いますが、この保護者の義務の実施を一時的に延期し、あるいは義務を解除することを就学義務の猶予・免除といいます。
就学義務の猶予又は免除の事由としては、「発育不完全その他止むを得ない事由」と規定されており、就学困難と認められる場合は、その保護者に対して、市町村の教育委員会が就学の猶予・免除を行うことができます。
この場合、病弱等の身体的事由は、盲学校、聾学校又は養護学校における教育にたえることのできない程度のものであることを要し、治療又は生命・健康の維持のため、療養に専念することを必要とするために、教育を受けることが困難又は不可能な者が、これに該当します。
「その他止むを得ない事由」としては、児童生徒の失踪等が考えられますが、経済的事由は含まれません。経済的事由により、就学が困難な者については、市町村が必要な援助を与えるものとされているからです。そのほか、止むを得ない事由としては、教護院や少年院への入院や海外から帰国した子女の日本語教育のために、適当な機関で学習させること等が認められています。
しかし、教育の機会均等及び義務教育の完全実施の観点からも、就学義務の猶予又は免除を認める事由は、できるだけ厳格に解されるべきものであり、その認定については、慎重に行う必要があります。
編入学時の学年認定
就学義務の猶予・免除者の編入学時の学年認定については、「学校教育法第二十三条の規定により、保護者が就学させる義務を猶予又は免除された子女について、当該猶予の期間が経過し、又は、当該猶予若しくは免除が取り消されたときは、校長は当該子女をその年齢及び心身の発達状況を考慮して、相当の学年に編入することができる。」(学校教育法施行規則第四十三条)とされており、したがって、学年認定は、校長の判断によることになります。
具体的な事例を紹介します。
一、中学二年の学年当初から、二か年間就学猶予をした場合
就学猶予による就学義務は、その猶予された期間、延長されるものではなく、満十五歳に達した学年の終了によってなくなってしまいます。したがって、保護者は、この子女を中学に編入させる義務を失います。
ただし、保護者によって、居住の市町村教育委員会に就学を申し出、当該教育委員会の許可があれば、就学させることは可能です。
二、小学校四年終了後、二か年間就学猶予した場合
小学校の課程を修了しない者を中学校に入学させることはできませんので、まず、小学校の相当学年に編入させ、その後は、学年を追って、進級させることになります。
三、小学校五年で就学免除を受け、満十四歳に達した者を編入させる場合
満十五歳に達した学年の終了までは、就学の義務がありますし、小学校の課程を修了していないので、「二」の例と同様、小学校の相当学年に編入させることになります。
又、この者が、中学校に入学のとき、既に満十五歳を越えている場合は、当該市町村教育委員会の入学許可を必要とします。
四、教護院や少年院から退院する場合
教護院や少年院においては、その内部で、小学校又は中学校に準ずる教科を授けることとなっており、当該教育課程を修了した者に対し、施設の長は、修了の事実を証する証明書を発行することができ、この証明書は、正規の学校において、校長が授与する卒業証書等と同一効力を有するとされています。(児童福祉法第四十八条、少年院法第四条)
したがって、この者が退院したとき、まだ学齢にあるのであれば、校長は、施設の長が発行する修了証明書及び指導要録に準ずる書類の写しの送付を受け、これに基づき、該当学年に編入させることになります。