教育福島0150号(1990年(H02)10月)-009page

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(2) 自己実現の方策を探るための学力要素

学力の定義に照らして指導法を改善するための方策を探るために、学習指導要録に示されている各教科の達成目標に対応した評価の観点を踏まえ、各学科、各教科に共通する七つの学力の構成要素を考え、学力要素と呼ぶことにした。このことについては、「表1」のとおりであるが、以上の学力要素に加えて、学力要素とは異なる意志と定着の状態を表す概念を「表2」のように規定した。

これらのことを構造化すると「図1」のように表すことができる。

 

図1 学力要素との関連

 

(3) 自己実現を図るための学力形成の過程

 

(3) 自己実現を図るための学力形成の過程

生徒が将来にわたり置かれた状況を的確に把握し自ら考え、自ら学び、自ら行動するなかで、社会に有為な人間として自己実現を図っていくための学力形成の過程を構造化すると「図2」(十ページに掲載)のように表すことができる。

 

(4) 研究の構造

本研究全体の進め方は、「図3」(十一ページに掲載)に示すようにした。

その際、学力の実態及び生徒の意識の傾向が学科等により異なることが推測されるので、学科ごとにその特質をとらえた方がより的確に改善の方策を判断できると考えた。そこで研究に当たって普通科については、特に必要があると判断される場合は、進学する生徒の多い学校を普通科1)とし、就職する生徒が多い学校を普通科2)として区分し、分析を行った。また、職業学科については、必要に応じて学科の区分に従って分析等を行った。

 

2 各学科ごとの実態

 

本県公立高校生の学力や意識などの実態がどのようなものであるかを明らかにするため、「図3」の構造図に示した高等学校入学者選抜学力検査結果等の各種資料の分析を行い、実態把握に努めた。また、職業科においては、学科独自の各種検定結果、標準テストの結果及び学力対策会議の協議内容などを総合して各学科の実態把握に努めた。

その概要を次に述べる。

 

(1) 普通科の実態

県立高校の普通科の生徒は、全体の約六割を占めており、次のような実態にあると考えられる。

まず入試結果の分析からみた特徴としては、普通科1)の生徒は、ほぼ基礎・基本は定着している。しかし、学

 

表1 学力要素

学力要素概念の内容
発見する力未知の事象に遭遇して驚き心に留め、以前の経験と照らし合わせ、違いを認識することができる力
把握する力事象や記述、図式などについて、その主張や要求、全体像などを正確に客観的にとらえ、理解することができる力
判断する力概念・表象等について、思考、直観、感覚によって、相対的にあるいは絶対的に、肯定したり否定したりすることができる力
創造する力現在持っている概念や感覚などから新たに何かを生みだそうと、全体像を想い描きながら、ある系列に沿ってあるいは自由に、思惟する方向に全体と部分を構造化し、価値あるものをつくり出すことができる力
推論する力不確実な状態ながら、ある程度構造化した概念を視点を定めて客観性をもつ形に構築し、一般化するとともに発展させていくことができる力
表現する力発見、創造や推論の過程や結果で生じた概念、感情、思惟等を他が理解できるように、または自分で納得したり満足したりするために、口述や記述、図式、その他の方法で具象化できる力
鑑賞する力かつて自分が経験してきた内容といま自分が体験していることをつき合わせ、比較により過去の体験をさらに深めたり、自分で経験していないことを追体験したり、またそのことや新たな体験に感動したりすることができる力

 

表2 意志及び定着

意志何かを成そうとするとき生じる障害や費やす時間の長さに耐え、これを乗り切り、持続しようとする意欲の大きさの度合い
定着ある期間を経過した後、習熟した概念、技術、技能などの内容が体得されている度合い

 

 

 


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