教育福島0150号(1990年(H02)10月)-012page
3 学力向上を図るための改善の視点
(1) 共通に考えたいこと
各学科ごとに分けて実態の把握を行ったが、今後各学科とも共通に努力していきたいことの概要を述べる。
1) 読書習慣を育成する
学力の伸長ということについて考える場合、読書習慣の育成は不可欠である。読書によって、把握する力や判断する力、推論する力、表現する力等の土台がつくられるからである。
しかし、高校生の読書の実態は、意識調査の結果によると、「読書に費やす時間」が極めて少なく、また、毎日新聞社の学校読書調査によると月平均一冊強の読書量でしかない。しかもその内容がそれほど思考力を要しない軽い読み物が多いという実態の中で、読書指導をどのように進めるかは今後の大きな課題である。特に、テレビをはじめとする映像文化や漫画等が家庭の中で市民権を得てきている状況、また受験競争の激化等、高校生に対する読書指導を推進していくうえで様々な困難が横たわっているのが実情である。
しかし、すべての教科を学ぶうえで基礎になるのは読み取る力であり、特に、論理的な思考力や表現力は読書によって養われることも多いことを踏まえ、読書指導を単に国語科だけの問題にとどめることなく、学校全体の問題としてとらえ、全教職員の共通理解のもとに強力に進めていく必要がある。
読書習慣を育成するための活動として、次のようなものが考えられる。
○図書館利用の活発化
○読書を促す授業の工夫
○読書のホームルーム活動計画への位置付け
○読書感想文コンクールの実施
○読書ノートの活用
○小論文添削指導
その他、様々な工夫により、高校生の読書への意欲を喚起し、読書習慣を確立させる取り組みが期待される。
2) 最小限の基礎学力を定着させる。
高等学校への進学率の高まりにつれて、小・中学校段階において定着すべき基礎的なことが未定着のまま入学している生徒も多くなってきているのが現状である。このような状況で、社会の変化に対応して自己実現を図るための最小限の基礎学力は、新聞の社会面に記載されている程度の内容を理解することのできる読み、書き、算であろうと考えられる。最小限の基礎を定着させるには次のようなことが考えられる。
○ 国語では、生徒に音読と黙読をよく練習させるとともに、常用漢字の読み書きが正確にできることである。さらに、文書や文の組み立て、語句の働き、表記の仕方などについての基本的な知識をもたせること。また、相手が分かる話し方ができることと、相手の話をよく聞ける力を身に付けさせることであろう。
○ 数学では、小数、分数、正負の計算や簡単な指数計算、また、数学1)程度の最も簡単な方程式について、教科書の例題等での立式の理解が必要である。更に、三角形の相似、三角比、三平方の定理までは定着させたい。
○ 社会において、「地理的分野」では、日本及び世界の諸地域の概要を地図上の位置付けと併せてとらえること。「歴史的分野」では、各時代の推移を主な事象と併せて理解し、歴史の流れ全体を大まかにとらえること。「公民的分野」では地理・歴史と関連付けてい政治や経済についての基礎的事象を理解させることが必要であろう。
○ 理科では、自然を理解するための基礎として、時間や距離、質量、速さの概念及び細胞や原子・分子の存在を知った上で少し高いレベルのエネルギーの概念について理解することが必要である。
○ 英語においては、中学校で取り扱われる単語約千を理解できること、文法事項・語法の中学校必修語四百九十語を用いて書かれた(または話された)英語を読み取れる(また聞き取れる)こと、できれば中学校必修語を用いてまとまりのある内容の英語を書くこと(話すこと)ができることであろう。
3) 授業の質を高める
学力検査の結果や各種調査の分析結果から、把握する力、創造する力、推論する力等の不足が指摘された。また、これらの力が複合された場合に問題解決能力が低くなることが明らかになっている。そこで、それらの能力を養うため授業の質を高めるにはどのようにしたらよいだろうか。
授業は、教師の生徒への働きかけにより展開されるが、一般的に講義、説明といった教師の働きかけの強すぎる形態がより多くみられるのではないだろうか。生徒の能力を伸ばすには、生徒が積極的に活動して主体性を発揮できる授業の工夫が必要になるものと考えられる。
○ 発問のあり方について