教育福島0150号(1990年(H02)10月)-013page
教師の発問に対して生徒が「イエス・ノー」式に答える形態は、当たるか、はずれるかの二者択一の刺激だけになって平板な授業になってしまう。少なくとも授業のポイントにおいては、生徒が思考することのできる発問を用意し、生徒を活動させることが必要である。生徒は、自分自身が活動し、新しい知識や技能を得ることができる学習に対して充実感をもつことができるのである。
○ 授業構造について
現在、多いと思われる教師主導型の授業では、拡散的思考を働かせる場面が少なく、収束的思考の場面が多くなってしまうものと考えられる。
想像とか連想とかをふんだんに働かせるためには、拡散的思考場面が必要であり、そのことによって創造力等を高めることもできるものと考えられる。
拡散的思考場面をできるだけ多く組み込むためには、授業構造をどのようにすればよいか、その工夫が迫られているものと考える。左に示すのは、「三角形の内角の和を求める」ことを例とした具体例である。
4) 生徒の意識を高める
生徒の意識調査によると、全般的に勉強することに対して消極的な一面や高校入学に対する目的意識がやや低い傾向がみられる。このことは、把握する力や創造する力などとともに、自ら主体的に考えることとも深いつながりをもち、学力要素と無縁ではない。
これらのことから、今、生徒に必要とされていることは、生徒自身が、現在の状況から少しでも自分を高めようとする意識、すなわち「やる気」をもつことであると考えられる。
例 「三角形の内角の和を求める」ための授業
[収束的思考が多い授業構造]
1)三角形の内角の和は2直角であることを示す。
2)なぜそうなるのかを証明する。
3)生徒が理解できたかを確認する。
[拡散的思考が多い授業構造]
1)三角形の内角の和を求めることを示す。
2)どうしたら課題が解けるのか生徒に考えさせる。
3)生徒の考え方を発表させる。
4)2直角らしいということを発見させる。
5)生徒とともに証明し、それぞれの生徒に自分の考えを確認させる。
「自己を向上させたい」という願いは、人間が本来もっている基本的な欲求であるはずである。したがって、生徒は、それぞれに、自分の人生を切り開くために、理想をもっているのであろうし、それを実現したいと思っているに違いない。
しかし、実際にはかなりの生徒の場合、その決心も時間の経過とともに薄れ、目標の一部の達成も思うようにいかなくなるのが現実であると考えられる。このような現実を改善するためには、次のような方策が考えられる。
その一つは、「自分の長所を自覚させる」ことである。長所は、個性とか特性とかいわれ、他人にはない一人一人の卓越した「よさ」や能力であると言える。生徒が自分の長所を自覚し伸ばすためには、まず、自らが広く人と交わる活動の中で積極的に発言し行動してみること、そして、他人からの評価を謙虚に受け入れるように心がけることが必要であろう。このことから、生徒の長所を伸ばすために生徒が学校生活に積極的に参加できるよう特別活動を含めた指導の在り方を工夫すること。また、教師の指導姿勢として生徒の考え方などの「よさ」を積極的に認め、賞賛し励ますことが大切であると思われる。
その二つは、「主体性を確立させる」ことである。主体性の確立とは、「他人によりかからない立場を自分の中に確立する」ことであるといわれる。生徒の意識調査には、入学の理由に「皆が高校に入るので」と言った自主性が不足していると思える一面が見られる。また、忍耐力が弱く、受身的で、主体性を欠いた生き方をしている生徒が少なからず存在している現実がある。
このことから、生徒を受身にさせない学習指導、生徒指導、進路指導を展開することが求められていると考える。生徒が、学校生活のさまざまな場面で自分を生かし、活躍することで自信をもち、現在と将来の生活に対して確かな意識をもつことができるようにしたい。生徒一人一人の「やる気」は、極めて主体的、個性的なものである。そこで、教師としては、何が生徒にやる気を起こさせ、何が生徒のやる気を失