教育福島0150号(1990年(H02)10月)-014page
わせるのかよく考え、可能な限り一人一人の生徒に目を向け個に応じた指導に当たることが望まれる。
5) 考える習慣を確立する
誰もが子どもたちを、物事を深く考え、的確に判断することができる人間にしたいと願っている。しかし、現在の子どもたちの置かれている環境は、必ずしもそのような子どもを育てるに十分であると言えないと思われる。特に、テレビ等の影響は大きく、子どもを受身にし、深く考えない傾向に追いやっていることが考えられる。
また、各教科の学力検査結果の分析をすることによって、総合する力として必要な「把握する力」や「判断する力」、「推論する力」等がどの教科でも不足していることがわかったが、このことは学校教育が、記憶力を中心とした詰め込み教育であるといった批判がなされている現実と深くかかわっている。
このような現状にあって、「自ら考え、正しく判断できる生徒」を育成するためには、何と言っても「考える」ことを習慣化することが何よりも大切である。すなわち、ささいなことでも考え判断する、考えて行動するといったことの習慣付けが「考える力(思考カ)」を育成することにつながるものと考えられる。そして、「考える力」が育成されることによって、「把握する力」等の向上が期待されることとなるのである。
そこで、考える習慣を定着させるために、学校教育の中でどのようなことが考えられるか、それぞれの学校において創意工夫を凝らし教育活動を展開したいものである。そのためには、普段の授業において生徒を受身的な立場に立たせることを少なくし、生徒を活発に活動させることのできる授業展開の工夫が必要である。そのような授業展開の一つの方法として「課題解決学習」あるいは「問題解決学習」が有効であると考えられる。
課題解決学習では、自分で課題を決めることができ、また、生徒一人一人の能力・適性を考慮した課題の提示をするため、自分の立てた目標や個々の程度に合った課題内容に挑戦することになる。したがって、目標や内容に無理がない限り、努力すれば成功感を味わうことができ、それが意欲につながるものと考えられる。
他と比較することによってのみ成功感を感じさせることが多いと、能力の低い生徒は失敗感だけを強く抱くことになりかねない。しかし、生徒一人一人に、それぞれにふさわしい目標を持たせ、それを達成させるようにすると、生徒は成功感を味わい、また、教師の賞賛を励みとして意欲が一層高まるなど良い作用をなすと考えられる。
考えるということは、本来、自主的なものであるが、生徒の自主性、主体性を掘り起こし、ものごとを深く考えることのできる態度を育てたいものである。正しく行動できる生徒の育成のために、教師自身が感性をしなやかにし、創意・工夫に努めることが大切であると考えられる。
(2) 各教科、学科の学力向上のための学習指導法の改善の視点
1) 国 語
ア.全学科に共通する改善の視点
○ 「表現」及び「理解」領域の土台としての豊かな語い力を身に付けさせるように努める。
○ 説明的文章においては論理的思考力及び的確で効果的な表現力を、また文芸的文章においては登場人物の心情や作品の主題等を表現に即して的確に把握する力を、それぞれ養い高めるように努める。
○ 古典においては、生徒の能力・適性、進路等の実態を踏まえ、効果的な指導法を工夫する。
○ 形成的評価や定期考査後の追指導を適切に行うことにより、基礎的・基本的事項の確実な定着と応用力の養成を図るとともに、読書指導や表現力養成の指導の充実を図る。
イ. 普通科1)において改善を図る視点
特に古典の読解力、鑑賞力を一層高めるように努める。
ウ.普通科2)及び職業学科において改善を図る視点
特に現代文における基礎・基本の徹底を図るとともに古典離れをひき起こさないような配慮をする。
2) 社 会
社会では、特に把握する力、推論する力、創造する力、表現する力の学力要素を補うことによって学力の向上が図られる。そのための各学科に共通する視点のみ次に記す。
歴史的事象等を一つの側面からだけでなく、多角的・総合的に考察できるよう、学習の過程で適切な課題を提示し、その解決のための演習(小論文の提出を含む)を積ませるなどの指導の工夫が必要である。また、年表や歴史地図、分布図、各種の統計、その他の諸資料(文献、視聴覚教材など)を活用して、歴史的事象、地理的事象、社会的事象を具体的、実証的に考察でき