教育福島0150号(1990年(H02)10月)-015page
るよう指導する必要がある。
その際、諸資料の活用に習熟させ、その確かな読み取りを基に、歴史、地理、政治、経済、倫理を自ら学び考え自分の言葉で表現できるよう指導・援助する。また、形成的評価を行うとともに、基本的事項の定着を図るためのドリル演習も必要に応じて実施する。
3) 数 学
各種の分析結果から数学については、次のようなことが言える。
ア.生徒により基礎的・基本的な事項の定着が十分でない。
イ. 問題文、図形等の読み取りが浅い。
ウ.自ら考えるよりも記憶に頼ろうとする。
このことは、一般的な傾向として、把握する力、創造する力の不足によるところが大きいと思われるので、次のような観点から意識的に指導していくことが必要である。
ア.作業学習を多くし、体験させることにより理解を深める。実態によっては計算力の補充のために簡単な計算機の使用も考慮する。
イ.問題文や図形について、その構成や構造などを十分分析させるなど、深く読み取る習慣の育成を図る。
ウ.見通しを持って解決の構想を練り、さらにその結果について検証する。この繰り返しにより論理的な思考の習慣の育成を図る。
4) 理 科
理科においては、特に、「推論する力」や「創造する力」などの育成を図ることが必要である。
授業の中に、予測することや仮説を立てることなどの探求の過程を組み込み、生徒の学習活動をより一層広げることが大切である。そのためには、生徒たちの自主的な学習活動を促し、学習活動の中に、推論する場面や創造する場面を具体的に設定することが求められる。
そのために、従来の教材の見直しを図るとともに新素材や先端技術を取り入れる工夫などを行う。さらに、指導者は、その教材を学ぶうえで必要な推論する力、創造する力、表現する力などの学力要素を明確に把握し、それらの要素を学習活動の中に組み込むことにより、学力の育成を図ることが必要である。
5)英 語
学力要素それぞれについては、中学校在学中に相当の伸長をしていると考えられる。しかし、実際の場面では、多くの場合、学力要素を複数で組み合わせた形で用いることが要求される。学力の向上は、個別の学力要素の容量を大きくする努力をするとともに、個々の学力要素をいかに迅速に有機的に組み合わせることができるかにかかっている。また、高等学校における英語学習の最終のゴールを表現力ととらえ、あらゆる教育活動をその目標を見通したうえで進めることが必要である。そのための指導法の視点は次のとおりである。
ア.「理解」と「表現」の基礎を成す語い・語法・文法事項の定着を図る。
イ.話の内容や文章の大意・要旨を把握できる読解力・聴解力を身に付けさせるよう努める。
ウ.「望日かれていること」「話されていること」に、適切かつ迅速に反応できる表現力を身に付けさせる。
6)芸 術
芸術の活動は、人間が本来、内に秘めている創造的な本能ともいえる表現欲求と美的感性に基づいて、自分の願望や心情、考えなどを音や形で表したり、生活を豊かにするものをつくり出したり、美しさや喜びを味わったりする「知・情・意」の総合的な活動である。しかも、創造活動は、いろいろな能力や経験を基にして拡散的に思考する行動である。それだけに、芸術科における学習は、すべての学習を総合した学習であるとも言える。
したがって、学力の要素として規定した諸能力を向上させるためには次のようなことが必要である。
ア.表現や鑑賞の活動をとおして生徒のどのような能力や態度を育てようとするのかを明確にする。
イ.授業の入力の段階、授業の過程における「知・情・意の総合化学習」として熟成を図る段階、更に創造行為として出力させる段階など学習の構造を明確にする。
7)農 業
農業科で学力向上を図るためには次のような学習指導の改善が必要である。
ア.「農業基礎」では、生徒、学科や地域の実態等に合った作物を栽培させ、栽培の各過程をとおして、生命を育てる喜びや収穫の喜びをより多く体験させるなど、農業への興味・関心を喚起し、農業学習の意義を理解させる。
イ.生徒に具体的な学習目標を与えるために、学科の特性、生徒の学習状況に応じた公的職業資格や技術検定を各科目の学習の中に設定し、資格取得による成就感や自信をもたせるようにする。
ウ.各学科として最小限定着させなければならない学習内容を精選し、各