教育福島0150号(1990年(H02)10月)-020page

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五・五パーセント、デンマークが十二・一パーセント、西ドイツが十五・〇パーセント、あとイタリア、フランス、アメリカというのはもう少し低いんですけれども、十五・三パーセントということになっています。ひとつの目安は、この総人口に占める六十五歳以上の人の割合が七パーセントから十四パーセントへ移行していく、これが高齢化社会に向かっていくということであります。それで、十四パーセントに到達すると、高齢化社会とはもう言わないで、高齢社会と言うふうに呼ぶのであります。一応専門家の間ではそういう習わしになっているようでありますけれども、その高齢化にどんどん向かっていく我が国では現在十一・六パーセントくらいですから、もう少し間があるんですが、普通七パーセントから十四パーセントに到るまでの年数というのが問題になります。これが、フランスの場合大体百三十年かけて徐々にそういう状態になっていったんですね。それからスウェーデンは八十五年、アメリカが七十五年、イタリアが五十五年、西ドイツ、イギリスは大体四十五年と、この中へ我が国は、二十六年でその状態に達していくということですから、これは相当な速さですね。世界中から注目を浴びるような独特な国であります。とにかく、急速に高齢社会に向かっていくということであります。それに伴って、いろいろなことが起こるわけでありますけれども、まず経済の担い手が少なくなる、これはもういつも挙げられる例でありますが、一九八八年のデータで六・二人の生産人口、生産人口というのは十五歳から六十四歳までの、まぁ若手の連中が一人のお年寄りを支えるということです。つまり六十五歳以上の高齢者を六・二人で支えていた、それが、やがてくる二〇二〇年には、これはよく聞かれる例でありますけれども、二・五人で一人のお年寄りを支えていかなければならない。しかも、高齢者というのはもう、八十、九十、というような人がたくさん増えていきます。昔は大体、ある年へ来ると病死したものでありますが、今はなかなか病死ができない。それでいつまでも長生きされます。

これが、いわゆる今日のテーマでありますライフサイクルプラン。ライフサイクルプランも非常に大きく、変わってきたわけです。今、正直言って、みなさんは退職なさいますと、 一時はきっと茫然となさるかもしれません。けれども、本当に今から準備をなさっていた方はきっと幸せに満ちあふれるという感じがすると思います。つまり、いやなことはやらなくていいんです。こんな世界というのはないです。

いやな仕事をやらなければいけなかったのが、いやな仕事をやらなくて、本当に自分の楽しい仕事だけやっていけるのですから、こんないい人生はないと思います。ですから私は、六十五歳以上の方をシルバー・エイジというのは、とんでもない話だと思うのです。私は、六十歳代は、少なくとも、ダイヤモンド・エイジというのが実感です。七十になってからは、ゴールド・エイジというものが来るでしょう。八十になってからは多分ですね、あるいはシルバー・エイジと言えるような時が来るかも知れません。それで、問題はその六十からずっときまして七十があって、八十があって、そして九十があります。ここから先へまだ延びていくとするとこの先に実はいわゆる、グレーゾーンというものがあるわけです。これが高齢化の問題なのです。本当の意味での問題というのは、このグレーゾーンをどう生きるかという、これだけのことなのです。つまり、シルバーまでは、自分で自分の体を自分で処理できる、そういう時期であります。しかし、問題はこの時期以後のことであります。これは一つの目安でありますけれども、賢い人はずっとこのグレーゾーンを後ろに延ばしていくのです。グレーゾーンを極端に短くしましてあっという間にあの世へ飛び出すというのが、一番いいんです。ですから私はこのグレーゾーンが問題でして、ここのところをどう扱うかということをみんなあまり真剣に考えてないんです。その前のところなんか、問題ではないのであります。今、ここの対策が問題であります。人間の生命とか、人間の人格とか、人間そのものの尊厳をどこまでみんなで守っていこうとするかというのが、このグレーゾーンの大テーマなのです。残念ながらそういう点では我が国は、まだまだです。

ヨーロッパの福祉先進諸国というのは、主に北欧ですが、今、寝たきりという言葉が完全に死語になりつつあるということです。

 

「60歳からの生き方」の講演をする多湖輝先生

 

「60歳からの生き方」の講演をする多湖輝先生

 

 

 


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