教育福島0150号(1990年(H02)10月)-029page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

ともかく今お話ししましたように日本の高齢化の問題というのは急速になってきたということと、それからもう一つは、その準備はうまくできないような人たちが実は世の中にたくさんできている、ということですね。それに対して我々はどう備えていくかということをお話していきたいと思いますけれども、とにかく、そんなふうにして地位と別れなければいけない、それからお金も不自由になり、お金ともある程度別れていかなければならない。それから、家族とも別れる。部下とも別れるというふうに、人と別れていかなければいけない。それから何と言っても今までは職場にいると生の情報がどんどん入ってきましたが、そういうものとも別れていく。体力も気力も衰える。生きがいとか夢とか言ったそういうものもだんだん暗くなってくる。このようなことは分かりきっているんです。ですから、始めから心を決めて、新しい見方で人生を今から出発するんだというふうに考えないと、えらいことになるんです。

もう年をとったら一体どういうことが起きるかということを予め、きちっと予測をなさって七つの別れは七つの別れ、もうきれいにすっぱりと、それは頭の外へ送るんです。もう、そういうふうになるんだ、決まってるんだ、と。それからどうしたって普通、年をとってからはもう前向きの、希望をなくしてしまいます。これから私の人生だなんて思う人はまず少ないです。もう前向きに生きられなくなる。何をするか、みんな、後ろ向きです。そして若いのをつかまえて、「お前たちは何だ」と「俺たちの若い頃は」と後ろを振り返るようになったら、もう自分も年寄りだと思わなければなりません。過去を振り返る、自分の過去の栄光にこだわる、これが多いんです。それからだんだんと自分の殻に閉じこもって若い人たちが何かやっていても、「あいつら全く俺たちと世代が違うよ、新人類だ」と、「全然、関係ない」と、もう、こういうふうになってきます。また、新しいものに挑戦する意欲みたいなものがなくなってしまいますし、それから何と言ったって、無精になります。それから、人間関係がだんだん縮まってくるでしょう。特に今まで、肩書きでお付き合いしてたような人、仕事上のお付き合いの人、そんなの、みんな離れていって、人間関係は縮まります。そうすると、寂しくなります。そういうふうにして、寂しくなって人生がだんだん縮んでいくような気持ちになりますと、当然なことですけれども、落ちこんできます。この抑鬱状態を自分で回復する道を持ってない人というのは、それっきりずっと落ちこんでいってしまうんですね。そうすると、最後はどうなるかといえば、これはもうだめなんです。ぼーっとして、何にも気力がなくなるんです。これがボケの始まりなんです。だから、そういうふうに同じボケに行くにしても、ガンに行くにしても、どこに行くにしても終点に行くのに新幹線に乗っていくか鈍行に乗っていくかは自分でつくれるんです。人間ですから。

このように、人生というものは確かに選んでいける要素というのがたくさんあるんです。特にこの高齢化に進んだ時の人生というのは、私は絶対に自分で選ばなければだめだと思います。その選ぶ道を知らない人というのが要するに早く老けていく、早くあの世へ行く、つまり新幹線に乗ってず-っと終点に着く人だと、私はそう思っているんです。それでは一体、どんなふうにして鈍行に乗るのかという話ですけれども、これはいろいろな方法があると思いますが、私はまず周りにいて元気で、生き生きとしている人達を見渡すんです。それでなぜあの人があのように若くいられるのか、そういう秘密を分析するんです。そしてそれがどうもこれらしいということがわかったら、一歩でも二歩でも近づく努力をする、私のやり方は、これなんです。

私はそれをまねするんです。そのような人達は「俺がいなきゃどうにもならん」というような考えですので、自分もそのようにつくっていけばいいじゃないかいと、こう思うんです。

つまり、職場からは引退しても、人生からは絶対に引退してはだめなんです。人生のいつも主役でいる、ということをいろいろ自分でつくりだしていくことを考えるんです。

ですからほんのもう一歩踏み出すか踏み出さないかで人生が全然違うんです。これから本当に、ご自分で自分の人生を計画通りやっていく、それをご自分で立てなければだめです。人に任せてはだめなんです。この道は自分で探していかなければだめなんです。

それがその自立の道であって、厳しいことですけれども、それをおやりになれるか、なれないかによって、特急で行くか、新幹線で行くか、鈍行で行くかという話になるんであります。これからはやはりお互いに自分の人生ですから、楽しい設計をして、そして自分の手作りで人生を歩いて、いつまでも若々しく元気でいようではありませんか。

どうぞひとつこれからもがんばっていただきたいと思います。

 

示唆に富む基調講演を熱心に聴く受講者の皆さん

 

示唆に富む基調講演を熱心に聴く受講者の皆さん

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。