教育福島0151号(1990年(H02)11月)-009page

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きな問題となってきている。

厚生省児童家庭局の児童環境調査の結果では、親が子どもと一緒にいる時間をどのように過ごしているかに対して「デパート等に買物に行く」「外へ出て食事をする」という結果が多くを占めている。親と子どもの接触は消費生活とレジャー活動のみに終始している。本来、家庭教育は教育の第一歩であり、親の毎日の行動をモデルとし、親との接触によって人間としての考え方、生き方等を学んでいくものである。

また、文部省が実施した「児童の日常生活に関する調査」によれば、基本的生活習慣にかかわるものがいかに身に付いていないか、いかに親によっておろそかにされているか、強く指摘されている。家庭の中で親によってしつけられるべきものの、親こそが指導しなければならないはずの人間成長の基礎基本がおろそかにされていることは家庭における教育力の著しい低下を示すものである。

 

(二) 遊びにおける問題

自然の汚染、マンション等の建造物増加に伴う空地の減少により「遊びの空間を失い」、塾通い、テレビ視聴などによる「遊びの時間の減少」、テレビゲームなどの普及により「遊び仲間の減少」など、遊びの状況が一変し、心が通い合うような遊びが失われつつある。このように子ども達は、幼児、児童期に社会性にとって必要な仲間集団やギャング集団のような遊び集団の経験もなく、青年期に入っても「子ども」を引きずってきている。異質の多数の仲間と切磋琢磨し、新しい広い視野で周囲に目を向け、自己を確立していくことが非常に困難な状況となっている。人間づきあいが苦手、少人数での表面的な人間関係など問題は多い。

 

(三) 学校における問題状況

最近の児童生徒にかかわるいくつかの問題として、万引等の初発型非行の増加、引き込もりや無気力、登校拒否、高校中退者の増加などの現象が取り上げられている。その原因は一概に断定できないが、学歴偏重や知識偏重の教育、児童生徒一人一人の個性、能力に応ずる教育の不十分さ、児童生徒を取り巻く人間関係の希薄化、マスコミや新しい情報メディアの影響、自然体験、勤労体験など様々な生活体験の不足等があげられる。これらの問題は単に反社会的、あるいは非社会的問題行動をとる一部の児童生徒の問題でなく一般化しているところに深刻さがある。内面的幼児性や自己中心性の肥大化が進行し、無気力、無感動の傾向をもつ児童生徒が多くみられる現状である。

 

以下、望ましい集団活動を通して、豊かな心とたくましい実践力を育てるための指導はどうあればよいかを求めて、自校の問題点や課題解決のため全校挙げて研究に取り組み、楽しく充実した学級づくりの実践をしている小学校を紹介する。

双葉郡川内村立川内第一小学校は昭和六十三年度から三か年にわたり福島県小学校教育研究会の指定を受け、新学習指導要領の趣旨を十分に生かし、特別活動の改善、充実を目指して研究に取り組み、その成果を平成二年十月二十日に発表した。

当校では集団活動、係活動を創意工夫して実践し、一人一人の活動意欲を高めた。

各学校では本校の成果を参考にしながら自校の指導の在り方を見直しその改善、充実に一層の努力をされるよう期待するものである。

 

係活動を通しての楽しい学校づくり

−川内村立川内第一小学校−

 

一、はじめに

本校は阿武隈高地の東部、標高約四百メートルの高冷地に位置し、児童数百四十八人の小規模校である。

児童は純朴で明るく、お互いに仲もよい。また、指示されたことには真面目に取り組む。しかし、学級その他の集団活動においては、自らの問題として取り組むことが少なく、活発な活動はみられなかった。さらに、友達と協力し合って自分たちの生活をより高めていこうとする自覚も十分には育っていなかった。他律的、受動的な面が強く、集団の中に埋没してしまう傾向がみられた。

本校は昭和六十三年に県小教研特別活動部会の研究指定を受けたが、本校の地域性や児童等の実態から指導のあり方を見直すよい機会となった。以後児童一人一人の自発性・自主性を伸長し、個性豊かな児童の育成を目指して実践的研究に取り組んできた。

 

二、研究主題について

県研究主題を受け、「一人一人の活動意欲を高め、豊かな心とたくましい実践力を育てるための特別活動はどうあればよいか」を本校の研究主題として、年度ごとに副主題を設けて実践してきた。以下本校では、本年度の副主題「自ら考え、問題解決に力いっぱい活動する係活動のあり方」を中心に記述する。

(1) 「楽しい学校」とは

児童にとって「楽しい学校」とは

 

 

 


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