教育福島0151号(1990年(H02)11月)-014page

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奉仕等勤労体験学習の充実のために

−高等学校−

 

福島県立川口高等学校の奉仕活動は、地域の過疎化や高齢化が進む中で生徒や教師の自然発生的な活動から、次第に教師集団の研究・討議が深まり、意図的、計画的な活動としてその目的や手法が整えられてきた。この時の活動状況は昭和六十二年〜六十三年度にわたる「学校・家庭・地域の連携による総合的な教育力の活性化」(文部省指定研究)の中でその成果がまとめられた。その後、平成元年度〜二年度にわたる「効果的なボランティア活動等の実践による学校教育の活性化」(文部省指定研究)として現在も引き続き研究実践が進められている。

奉仕等勤労体験学習の重要性は、学習指導要領の総則や特別活動のなかでも重んじられているところであるが、高等学校において、正しい勤労観や社会奉仕の精神及び職業観を育成することは、これから二十一世紀に生きる生徒にとって特に重要な課題になっている。学校の内外での勤労や社会奉仕の体験、職場見学などを通して、真の勤労と奉仕の喜びや尊さ、意識を理解し、職業や進路の選択に役立つ勤労観や職業観を身につけることは、将来の社会人・職業人としての生き方についての考えを深めるために大切であることが強調されている。

このような時期にあって川口高等学校でのボランティア活動は、「奉仕等の体験学習を意図的、計画的に行うことにより、人間としての在り方生き方を深めさせる」、「福祉サービスの個人としての実践を通して、一人一人を大切にすることの大切さを学ぶ」、「ボランティア活動を通して自分自身が人間らしく生きる努力、主体性の確立への努力を続けることが大切である」等、高校生活のなかで、自分の生活を点検し将来へ向けての自分の課題を発見するとともに、他者への関心、思いやり、社会への関心をもちながら自分を見つめ直すように心掛ける活動を目指している。また、教育課程上に「社会福祉基礎」や「社会福祉演習」等の新設科目を設け、手づくりの教科書を用いて身近な題材を通しながらの学習は、これから日本が迎える高齢化社会に向けての、取り組みへの一つの示唆を与えるものである。

 

地域に根ざした学校教育の推進と

Young Practice 10 & then

−県立川口高等学校−

はじめに

川口高等学校は、本県西端部の大沼郡金山町にある。面積二百九十四平方キロメートルの町域のうち九割が山林で占められ、世帯数千三百三十六、人口四千百十六人、六十五歳以上の人口比三十・六五パーセントと東北一の超高齢社会であり、かつ過疎化の激しい地域である。

川口高等学校は一九四八年に創立、定時制農業科・家政科が設置され、同時に横田村、沼沢村、昭和村に分校が置かれた。七六年、寄宿舎がつくられ、分校は全廃された。その後、山村の小規模普通科高校として、「川高教育」「川高方式」とよばれる独自の教育活動を展開し、今日まで着実な歩みを続けている。

 

一 学校概要

(1) 生徒概要

一学年二クラスの計六クラスで、生徒総数百七十名である。

最近の本校への進学動機は、就職のためとするもの三十五パーセント、進学のためのもの二十五パーセント、近くだからとするもの等が四十パーセントであり、それらの殆どが三つの小・中学校で少人数の仲間集団として似通った生活体験を共有してきており、地縁的、血縁的社会の中で共同体意識の強い小集団を形成している。また、卒業後の進路状況は、就職六十三パーセント、大学等進学三十七パーセントであり、その内、特に公務員約二十パーセント、四年制大学・短大約十七パーセントは本校の大きな特色を示すものである。

(2) 教育目標とその具現化への取り組み

只見川V字谷に刻まれた河岸段丘の各所に点在する集落で構成されている金山町では、これまでの良く手入れされた山林や丁寧に耕された棚田を基本とした生活だけでは、地域に住む人々の暮らしを支えることが困難になってきた。現在、町は過疎と急速な高齢化社会となってきており、当然、高校生の人数も減少している。彼らは洪水のように流れこむ多くの情報と日常の現実とのギャップに戸惑い、悩み、自己を確立することが困難になってきている。このような状況を考えると高校生としての彼らに対し画一的、教授主導の教育を行うことは「自己の確立」という面からも決してプラスとならず、また、生き生きとした学習活動、感動のある授業は成り立たない。

そのような地域の実態、社会の変化を踏まえ、本校では次のような教育目標(努力目標)を掲げ、その具現化に努力している。

1) 個性の開発

 

 

 


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