教育福島0151号(1990年(H02)11月)-043page

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最近は、首に縄を付けてでも引っ張っていくというやり方は通用しない。「後ろ姿で学ばせる」こと、すなわち率先垂範ということが大切になる。率先垂範によるリーダーシップの強化ということが社会にあっても強く求められており、学校の中でも大いにそれを推進して欲しいと思う。

3、家庭、学校、社会が三位一体となった連携プレーの一層の強化

究極的には一人前の人格ある人間として育てることに、家庭と学校と企業とがバラバラに関わっていてはどうにもならない。家庭生活の重視、学校教育、社会あるいは産業界の教育という三つの要素が一体となって連携プレーをしてはじめて人格形成に寄与する教育ができるのではないか。

○田口武人(田口病院長)

−将来の教育の課題と問題点−

1、教育の歪み

日本は世界一豊かな国になった。しかし、運動不足とたくさんのお菓子等のために身体は大きいが精神力の弱い子どもになっている。その上偏差値で輪切りにされた結果、希望しない学校に世間体や友人関係だけで通学している事実も多い。

県内では一年間に高校中退者が千人以上いると言われる。このような子どもたちの教育は難しいが、今後の時代に合った教育を期待したい。

2、落ちこぼれをなくす教育

高校、大学教育が必要な生徒は少なく、勉強嫌いの子どもは半数以上いるのではないかと思う。このような人たちを早くから技術、専門知識の面で、特訓して若い労働力として育て、明るい人生にしてやるために、職業学校、専門学校を増やす必要がある。また、働く人たちのために、検定で資格を取らせることも必要だと思う。

3、親の教育

現代は権威なき父親、母親が多い。従って、親子の信頼関係は弱く、親に子どもを導く力はない。親は本質を忘れないで欲しいと思うし、そのための教育が必要であると考える。

4、教育制度の改革

現代社会の世相を考えると六・三・三・四の学制が適当なのかを考える時期に来ていると思う。大学へも勉強のためにではなく青春を楽しむために進む人が多いことを考えると、むしろ、技術学校を充実させたり、働きながら資格を取るという検定制度を充実させることも重要だと思う。

5、子どもたちに明るい青春を

私自身が野球チーム等の指導をした経験を通して気になることに、上手な者だけが常に鍛えられ、そうでない者は活動から離れていくということがある。特別優秀でなくても、それなりに楽しめるような、明るい青春を与えてやったらどうかと考えている。

 

熱心に意見が交換された広聴会

 

熱心に意見が交換された広聴会

 

○清水国明(竹飛歩学園代表)

−親元を離れての大家族生活−

竹飛歩学園は昭和六十三年四月に東白川郡の鮫川村の協力を得て同村に開設した「ふるさと留学」の学園。東京育ちの元教員三人仲間の家族が自分の子どもを含む小学三年生から高校三年生までの男女四十一名の子どもたちと共同生活を送っている。

1、自然の中に学ぶこと

鮫川には非常に豊かな自然がある。優しい春の自然に溶け込み、厳しい冬と戦いながら子どもたちは何か大きな力を身につけているのではないかと思う。

2、親元を離れての集団生活

学園に大人は三家族六人だけで、自然に年上の者が下の者の世話をするという光景が出てきている。子どもたちは食事のしたくとかトイレそうじとかの仕事を一日一つすることになっており、仕事の分担は希望を取った上で会議で二週間分ずつ決めている。希望とは異なる割り当てもあるが、それぞれの役割をしっかり全うしないとやっていけないという厳しさがある。親元を離れることで親子の絆が弱まるのでないかという指摘もある。しかし実際は、面と向かっては言えないことを子どもが手紙に託したり、親の方でも子どもとの距離を置くことで普段気付かなかった良いところが見えたりすることもあって、親子の絆という面では心配ないと思う。

3、鮫川村の子どもたちとの交流

現在、学園の子どもたちは村の小・中学校そして県立高校の分校に通っている。村の子どもと、学園の子どもとは、学校の先生方のご努力で半年ほどですっかり心のふれあいができたようだ。そんな中で、小さい頃から、見知らない人との会話を禁じられてきた学園の子どもが、「大丈夫か、元気でやってんのか」等のいたわりと励ましの言葉をかけられたりしているうちに、都会の生活で忘れかけている人間らしさを学んだり、一方、鮫川村の子どもは、都会の子どもの発言の活発さ表現の豊かさ等の違いに気付きながらも同じ面のあることに安心してお互いに親しくなってゆくなど、両方の子どもたちにとって大いに勉強になっていることを喜んでいる。

○西谷征治(西谷学習塾経営)

−教育環境の充実と英語教育−

 

 

 


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