教育福島0151号(1990年(H02)11月)-052page

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養護教育センター通信

障害のある子どもの理解のために2

〜情緒障害〜

 

一、情緒障害とは

情緒障害についての考え方は、人によって多少違っていますが、ここでは平成二年三月に文部省から刊行された「心身障害児の理解」を基に考えを述べていきます。これを要約しますと、情緒障害は次のようにまとめられています。

親子関係や友人関係などの周囲の影響によって情緒に混乱をきたしたり、全般的な発達にひずみがあるなどの原因によって社会的に不適応な状態や人とのかかわりに困難性を示す状態を情緒障害と呼んでいます。

前者は、縅黙、習癖の異常などのように心因性の行動上の問題のある子どもであり、後者は自閉のような全般的な発達のひずみから生じる行動上の問題のある子どもを指しています。

これをみますと、原因としては「心因性」によるものと「発達のひずみ」によるものとの二つがあり、その状態像は「行動上の問題のある子ども」と定義しています。このことについて具体的な例を挙げてもう少し説明します。

(1) 心因性の情緒障害

これは本人をとりまく人間関係のひずみに基づいた、本人自身の心の葛藤や欲求不満が原因となり、社会的な適応困難を示した状態をいいます。つまり本来の意味での情緒障害であり一次的情緒障害ともいわれるものです。

具体的なものとしては、表1に挙げたようなものがあります。表の中の反社会的問題行動については、情緒障害に含める場合と含めない場合があるようです。

(2) 発達のひずみによる情緒障害

胎生期や周産期の障害や脳炎などの後遺症により脳になんらかの損傷を受けた子どもたちが社会的な不適応行動や対人関係に問題を起こす場合です。これは二次的情緒障害ともいわれています。ちえ遅れの子どもや自閉症児の起こす情緒的な問題がこれにあたります。また、現在のところ養護教育の対象にはなっていませんが、学習障害(LD)や注意欠陥障害(ADD)といわれる子どもたちにみられる問題のある行動などもこれに含めて考えることができます。

ここで注意したいことは、ちえ遅れや自閉症等そのものが情緒障害ではなく、それらは一次的な障害であるということです。このような子どもたちはその障害のために、発達にひずみがあり情緒障害を起こしやすい素因を持っています。このような条件の基に周りの人々の適切さを欠いた対応によって起きてくる情緒の問題を二次的情緒障害と呼んでいます。

 

2.情緒障害児の理解

情緒障害児は「行動上の問題のある子ども」であることについてはさきに触れましたが、このような子どもを前にしますと、問題となる行動に目が奪われる余り、「困った子ども」とか「悪い子ども」といった見方をしがちになります。そのような見方からは、子どもを共感的に理解することができませんし、子どもの本当の姿をつかむこともできなくなります。また、問題と思われる行動にも必ず理由があります。「困った子ども」といった見方からは、問題のある行動をひき起こしている理由を理解することができませんし、指導の手だてを見いだすこともできません。

子どもを理解するためには、子どもを受容し、子どもの身になって理解しようとする姿勢が必要です。更に、友人関係、親子関係、家庭(地域社会)環境、生育歴、教育歴を調べたり、場合によっては医学や心理学の面からの理解が必要になるでしょう。

 

3.情緒障害児の教育

一口に情緒障害といっても、前述したようにその障害も多種多様であり、それぞれのケースを取り上げて説明することは紙面の関係でできません。ここでは、情緒障害児を指導するときの一般的な留意事項についていくつか述べてみたいと思います。

(1) 一次的情緒障害に対する教育

心因性の情緒障害の多くは恒久的な障害ではなく回復可能な障害であるといわれています。ある状況のもとで心理的なひずみを起こしている状態であ

 

表1 情緒障害の分類

情緒障害 一次的(心因性) 神経性習癖チック 指しゃぶり 夜尿 遺尿 拒食 吃音(どもり)等
非社会的問題行動縅黙 登校拒否 孤立 内気 小心 その他
反社会的問題行動反抗 乱暴 授業妨害 盗み 怠学 その他<
二次的ちえ遅れ、自閉症状、学習障害(LD)、注意欠陥障害(ADD)などによる行動上の問題

 

 

 


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