教育福島0152号(1991年(H03)01月)-013page

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童にも、意識して読もうとする意気込みが感じられた。

以上のような指導により、次のような成果が得られた。

ア、 事前・事後テストから(資料5)

・事前テストにおける理解面の正答率が高かったのは、指導計画の読みなれる段階で繰り返し教材文を読み込み、読みの基礎づくりができたためである。

・音読の基礎練習は、特に下位の児童に有効であった。

イ、 自己評価から

・八十パーセント以上の児童が『大変よい』という反省をしている。これは、意識して読もうとした意欲の表れと、その結果に対する自信と満足感の表れである。その意味からも、この評価カードは意欲を高めるために効果的であった。

ウ、 情意面の評価から

・毎時間のめあてを「げきにして読もう」という児童の興味を喚起しやすい行動学習的なものにしたところ、従来の読みの授業にくらべ「おもしろい。本気になった」という児童が多かった。特に下位の児童の学習意欲を喚起し、集中して学習に取り組ませることができたといえる。

工、 吹き出しにみる児童の変容から

・事前にくらべ事後は、川や橋の様子やトッコの心情に触れているものが多くなった。

 

資料5 上・中・下位群別に見た児童の変容

3) 指導の実際・3

 

3) 指導の実際・3

トッコがつり橋をわたる場面を生き生きとイメージ化させるために、トッコと男の子の様子を役割読みをさせたり、事物と言葉を結び付けさせたりして正しく音読させる指導。

◎ 役割読みよって場面の様子をイメージ化する場面

トッコと山びこの様子を具体的にイメージ化させるために、トッコ役と山びこ役に分かれ役割読みをさせた。地の文の"だんだん大きくなってきたかと思うと "に合う音読を工夫することができた。また、教師の範読による読みくらべにより、「やまびこう」と「やまびこっ」の違いなどにも児童自身が気付き、読みを修正しようとする姿勢が見られた。

◎ 事物と言葉を結びつけて正しく音読させる場面

"ホオの木の広い葉を通してくる日の光 "の文は、ハ行の音が多く、点までのまとまりも長いため児童にとって抵抗のある文章である。そこで、ホオの木、シラカバのこずえなど実物を提示しながら、物と言葉を結び付けて正しく音読できるよう指導した。

以上のような指導により、次のような成果が見られた。

ア、 事前・事後テストから

・どの項目についても八十パーセント以上の児童がよく理解しており、範読による読みくらべ、事物と言葉の結び付けによる音読の指導が効果的であったことがわかる。

イ、 児童の反応から

・授業の中での発言、まとめの感想文を見てみると、教材のテーマに合ったトッコの自己変革について触れているものが多かった。

 

五、 研究の成果と課題

 

(一) 成果

(1) 音読の基礎練習を設定し取り立てて指導をしたため、音読に関する基礎的技能が向上し、声を出して文章を読むことが好きな児童が増えた。

(2) 場面の様子や人物の気持ちを考えて読み方を工夫しようとする態度が育ってきた。

(3) 劇化や役割読みを取り入れることにより、自己表現と各自の個性の絡み合いの機会を容易に拡大することができ、楽しく国語の授業に参加する児童が多くなった。

(4) 自己評価の工夫により、学習したことを生かしながら意識して音読したり、友達の読みを聞いたりする主体的な態度が育ってきた。

(5) 情意面の評価の工夫により、児童の内面や学習への取り組みの様子がとらえやすくなり、児童に適切な助言と指導が与えられるようになった。

(二) 課題

(1) さまざまな読みの活動を取り入れる際には、目的を明確にした上で効果的に取り入れることが必要であるが、その在り方について研究工夫する必要がある。

(2) 読みの個性化、個別化を考慮しながら、個に応じた指導方法の工夫を図る必要がある。

(3) 表現の場にふさわしい教室作り、環境づくり、学級の人間関係の育成に努める必要がある。

(4) 音読の実際的な評価に関する研究を進め、児童の内容読み取りとの関連を深める必要がある。

 

 

 


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