教育福島0152号(1991年(H03)01月)-014page
特選入賞論文
地域社会の発展を願う態度を育成する指導はどうあればよいか
〜4年社会科「きょうどを開いた人々」の単元における産業面での事例の教材化の試み〜
福島市立清明小学校教諭 会田智康
一、 研究の趣旨
(一) 研究の目的
四年生社会科の「きょうどを開いた人々」という単元では、地域社会の人々の生活の安全や向上を図るための協力的・計画的活動が、過去においても先人によって行われたことを理解させ、それによって地域社会の発展を願う態度を育てるということを目標としている。
ところで最近は、地域社会の変化によって、人間関係や文化・伝統・産業・自然そして人間性など様々な面において、多くの問題が出てきていることが指摘されている。その結果、郷土教育の重要性が叫ばれている。その郷土教育に正面から取り組む中学年社会科、そして四年生の本単元で、地域社会から学び地域社会に働きかける心情や態度を育てる方策を考えていきたい。
(二) 主たる問題点
地域社会についての学習を終えたばかりの五年生を対象に、資料1のような意識調査を行ってみた。(半数は三、四年生の時に担当)
その結果を見ると、本単元及び四年の社会の目標とするところに反して、自分達の町の発展に対する理解や関心の程度がかなり低い状態にあることが分かる。
(三) 原因の考察
その原因としては、四年の社会科の学習を進めるに当たって、地域素材を取り上げるよう努めてきたが、それが十分ではなかったことがあげられる。特に、本単元の学習ではそうだった。
本単元の内容について、現行学習指導要領では、「地域の開発や保全の具体的事例を取り上げる」ことと、やや狭く限定されている。ところが月舘町では、新田開発や用水路開削、土砂崩れ防止の植林事業など、いずれも小規模なものだったためか資料も少なく、教材化するのに適当な事例がなかった。
そのため、これまでは教科書(東京書籍)に載っている安積原野開発の事例を中心に学習を進めてきた。しかし、いくら同じ福島県内とはいえ、本校児童の生活とのつながりはほとんどなく、また、学習を進める上でも、見学、調査、体験など具体的な学習活動を行うことができなかった。
福島市や伊達郡内の他の小学校では、西根堰や東根堰を取り上げ、それを教材化して授業実践しているところも多い。しかし、西根堰や東根堰にしても、やはり月舘町の人達にとってはつながりが薄く、また簡単に見学や調査に行くこともできない。それで、これを取り上げることもできなかった。
(四) 主題解決までのおおよその見通し
新指導要領では、本単元の内容について、「地域の文化や開発などに尽くした先人の具体的な事例を調べて」となり、これまでよりも広い範囲から素材を選択できるようになった。そこで、やや先取りの感はあるが、地域の開発や保全にこだわらずに本単元の素材を探し、開発単元にならって指導計画を立案し授業実践をしてみればだ本単元の目標により迫ることができるのではないかと考えた。
資料1 町の発展に対する理解・関心についての調査結果
対象
時期
内容5年生37人 4年生44人 事前 事後 比較 元年11月 元年11月 元年12月 1)今、町の多くの人々が困っている問題にどんなものがあるか知っている。 6人 28人 35人 +7人 2)今、町の人々の暮らしをよくするために行なわれていることにどんなことがあるか知っている。 9人 8人 17人 +9人 3)町の人々の暮らしをよくするために努力してきた人について知っている。 2人 6人 38人 +32人 4)町の人々の暮らしをよくするために、自分でも大人になったらなにかしたいと思うことがある。 8人 11人 14人 +3人
二、 研究仮説
(一) 研究仮説
四年社会科の「きょうどを開いた人々」の単元において、開発面での適当な事例がない場合、産業面などその他の事例の中から身近なものを選択し、基本要素をおさえて教材化することによって、地域社会の発展に尽くした先人の働きを理解させ、地域社会の発展を願う態度の育成ができるのではないか。
(二) 事例選択で特に重視した視点