教育福島0152号(1991年(H03)01月)-016page
ことによって、自分達の生活とつながりのある先人の働きをとらえることができると考えた。【事例選択の視点1】
熊坂六郎兵衛さんを中心とする人々の働きについては、中学年用社会科資料に載っているばかりでなく、緬羊記念碑を見学したり、いくつか残されている毛糸や毛織物などの実物資料を調べたり、学校にある毛糸つむぎ機の実物を実際に体験したりできる。また、各児童が自分の家族に話を聞いたり、六郎兵衛さんの息子さんの六之助さんに当時の話を間いたりすることもできる。この事例を取り上げれば、見学・調査・体験など具体的な学習活動が可能となると考えた。【事例選択の視点2】
資料2 単元の教材構造
(二) 地域素材の教材化
1 本単元の基本要素について、指導要領の目標・内容、文部省指導書の解説、教科書の指導計画を分析してみると、次のようであった。(開発事例の場合)
(1) 導入・紹介(どんな開発を、いつ誰が行ったか)
(2) 生活の様子(開発する前の地域の様子はどうだったか)
(3) 願い(人々の願うは、どのようなものだったか)
(4) 経過・工夫・苦労(開発の経過とその際の工夫や苦労は、どうだったか)
(5) 効果(開発によって、地域はどのように変化したか)
(6) 今後の課題(今後の課題は何か)
2 以上の基本要素を、選択した事例に当てはめ、指導計画を作成した。(資料2・3参照)
3 資料の準備と授業の実践(省略)
写真1 毛糸つむぎの体験
五、 仮説の検証
(一) 授業中の発言やノートの記述から緬羊の飼育については、毛糸つむぎ機・毛すき機の設計図・毛織物の製作教本を見たり動かしてみたりしたときに、昔の人の工夫や技術に「なるほど」とか、「すごいなあ」とか、感心する姿が見られた。(写真1)
また、「緬羊飼育の栞とで、畳四枚分の広さで羊三頭が飼えることや牛や馬一頭分の餌で半八頭が飼えることなどを読み、それを副業として選んだ人々の知恵にも感心していた。
伊達郡が県内一の緬羊飼育頭数を誇ったことがあること、福島県が「緬羊王国」と呼ばれたことがあることを調べたときには、大変驚き、先覚者達の業績に感心していた。
熊坂六郎兵衛さんについては緬羊記念碑を見学した際の感想を書いたノートを見ると、緬羊組合「副長」の肩書があったことや、二か所も名前が刻まれていたのを見て、改めて「えらかったんだなぁ」と感心した様子がうかがわれた。(写真2)
資料3 指導計画 (総次数 15時間)
次 小単元名 時 主な学習活動 基本要素 1 学習計画 1 熊坂六郎兵衛さんが羊の飼育をしたことについて詳しく調べていく学習問題を作る。 (1)導入・紹介 2 自分の家の人に、熊坂六郎兵衛さんのことや羊の飼育のことについて聞いてくる計画を立てる。 2 羊の飼育 3 なぜ羊の飼育を始めたのか、家で聞いてきたことや実物資料をもとに、そのわけを考える。 (3)願い
(4)経過・工夫・苦労
(5)効果4 羊の毛をどうやって毛糸や毛織物にしたか、当時の技術や工夫について調べる。 5 なぜ羊の飼育が盛んになったか、そのわけを調べる。 6 緬羊記念碑を見学し、緬羊を導入した人々の業績のすばらしさを感じとる。 7 緬羊飼育の歴史について調べる。 3 熊坂六郎兵衛さん 8 熊坂六郎兵衛さんについての質問事項をまとめる。 (2)生活の様子
(3)願い
(4)経過・工夫・苦労
(5)効果9 熊坂六郎兵衛さんのことについて、その息子さんから話を聞く。 4 月舘町の農業の歴史 10 月舘町の農業はなぜ作物や家畜の工夫が必要だったか、そのわけにつえて考え、調べる。 (2)生活の様子
(3)願い
(4)経過・工夫・苦労
(5)効果
(6)今後の課題11 現在も、農業・農協・町などが協力し合って月舘町に合った作物に生産や販売の工夫をしている。 5 まとめ 12・13 月舘町の農業に関する熊坂六郎兵衛さん達の努力について、紙芝居にまとめる。 14 紙芝居を発表する。 15 本単元の学習について、感想文をまとめる。