教育福島0152号(1991年(H03)01月)-043page

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二、 中学校における研究実践概要

 

(一) 事前調査結果と育成目標

中学校では、三年生二クラス(一校一クラス)を対象に評定尺度1)・2)による事前調査を行った。その結果、いずれもA収集、B選択、C処理、D創造、E伝達、G情報化による影響、I情報に対する責任、K情報手段の特徴、L操作等が低く評価された。特に、G、K、Lは小学校より低かった。このため、一クラスは数学科の授業を通して「情報処理と情報手段の操作能力」の育成に重点を置き、また、他のクラスは、社会科の指導を通して「情報の処理と創造力」を高めるため、それぞれの育成プロセスおよび研究実践計画を立て、研究実践に入った。

 

小学校の総合評価(評定尺度2))

(二) 研究実践と事後調査結果

 

(二) 研究実践と事後調査結果

数学科の授業を通した実践では、シミュレーションによる情報の提示や処理が効果的と思われる単元(「図形領域」の「円」を取り上げ、生徒の主体性を重視するとともに、シミュレーションから規則性を発見させ、グラフィックにより論理的思考の深化を目指した。実践の結果、目標とした要素はすべて向上した。中でも女子のL操作は著しく変容した。

また、社会科の指導を通した実践では、「情報化社会」と中学校社会科とのかかわりを探る上から第三学年教材「経済」を取り上げ、要素C、D、E、I、Lの向上を目指した。事後調査の結果、目標とした要素のすべてに向上がみられ、特に、I情報に対する責任は、大きく向上した。

 

三、 高等学校における研究実践概要

 

(一) 事前調査結果と育成目標

高等学校では、普通科におけるコンピュータクラブ員および工業科(機械)一年生一クラスを対象に評定尺度1)・2)による事前調査を行った。その結果、コンピュータクラブでは、D新たな情報の創造、J情報科学の基礎の理解等の評価が低く、工業科一年生ではD、Jの他に、G情報化による影響の理解、L操作等も低かった。このため、コンピュータクラブでは、「新たな情報を創造できる能力」の育成を中心に、また、工業科一年生では、「情報手段の理解と操作能力」の育成に重点を置いて研究計画を立て、実践に入った。

 

コンピュータクラブにおける実践風景

コンピュータクラブにおける実践風景

 

(二) 研究実践と事後調査結果

コンピュータクラブでは、現代社会の授業で使われるデータを基に、視覚的にとらえることのできる資料作りを行った。資料作りでは、教育センターのパソコンとアプリケーションソフトを利用し、データの収集、加工(グラフ化)、他への伝達等を主体的に学習させた。実践の結果、目標要素はすべて向上した。一方、工業科一年生では、科目「電気基礎」の単元「電子計算機」を通し、チーム・ティーチングによりパソコンの操作やプログラミングに関し個別指導の徹底を図った。実践の結果、目標要素はすべて向上し、特に、J、Lが著しく向上した。

 

四、 研究のまとめ

 

今回の研究実践を通して次のことが分かった。

(一) F情報化社会の特質の認識に関する調査では、事前および事後において小・中・高校ともに自己を高く評価(五段階評価で四以上)した。

(二) L操作の要素は小・中・高校ともに大きく向上しており、短期間でも指導の効果が期待できる。

(三) L操作以外の要素の育成には、多くの機会と長期にわたる指導の継続が必要である。

(四) 情報モラルは、児童生徒にとって、かなり難しい概念であり、発達段階に応じた意図的な細かい指導が必要である。

 

おわりに

 

社会の情報化の進展は秒進分歩であり、情報活用能力の育成はますます重要なものとなっている。今後は、本研究の趣旨をさらに発展的にとらえ、研究に取り組む予定である。

 

 

 


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