教育福島0152号(1991年(H03)01月)-048page
教育ひと口メモ
LD
〈学習障害〉
養護教育センター
昭和五十四年の養護学校教育の義務化に伴い、障害の重い子どもに対する教育についての研究や実践が推進されてきました。また、一九八一年の国際障害者年を契機に、障害に対する一般の人々の理解も進んできています。最近では障害の重い子どもばかりでなく、障害の程度の軽い子どもや、従来は障害とは考えられなかった子どもへの教育的関心が高まってきています。ここでは我が国において最近関心の高まっている「LD」について解説します。
LDとは
最近、新聞などにも取り上げられているLDというのは、英語のlearning disabilitiesの頭文字をとったものです。日本語では学習障害と訳されています。
では、LDとは何でしょうか。人によって考え方が少しずつ違って、完全に一致はしていないのが現状ですが、おおよそ次のように考えられています
知的に発達の遅れがなく、知的な水準は普通かそれ以上であり、末梢感覚器官の障害や運動機能の障害もなく、学習をする上での環境的な不利や情緒的な障害がないにもかかわらず、学業不振であったり、読み、書き、算数などの学習の一部に知的な水準と大きな隔たりがみられるものです。
その原因についても、まだ、はっきりとは断定できませんが、学習能力に偏りがあったり、認知能力にアンバランスがあったりするほかに、行動や社会生活をする上の様々な特性から、脳に軽微な何らかの機能障害があるのではないかと考えられています。
次にその特性をいくつか挙げてみます。
(1) お話は何でもできるのに、文字が書けなかったり、文章を読ませるとたどたどしい読み方や読み間違いが多く、すぐに内容が理解できなかったりすることがある。
(2) 絵を描くことが苦手で、位置関係が理解できなかったり、稚拙な絵を描いたり、などがみられる。
(3) 数の概念が身に付きにくく、分数や小数の意味が理解しにくいことが多い。
(4) 落ち着きがなく、一つのことに集中できずに絶えず動き回ったり、友だちにいたずらしたりすることが多い。反対に興味をもったものには固執し、他からの働きかけを受け付けなかったり、時間を忘れてしまったりする、などがみられる。
(5) 整理整頓が苦手で、机やロッカーの中に物を詰め込んでおいたり、忘れ物をしたりすることも多い。
(6) 周りの状況を考えることが苦手で、自分勝手な話をどんどんしてしまったり、刺激にすぐ反応しやすく、少しの刺激で衝動的な行動をしたりすることがある。
(7) 遊びなどのルールが理解できずに、友だちと一緒に遊ぶことが苦手であったり、不器用で細かな手先の運動や縄跳びなどの協調運動がうまくできなかったり、などがみられる。
このような特性を、ひとりのLDの子どもがすべて示すわけではありません。また、発達に伴って様々に変化していく傾向もみられます。学習に関する特性は、小学校に入学した後に気付くことが多いでしょうが、行動の特性は乳幼児のころから両親などを悩ませることになります。このような子どもには早めに適切な援助が必要になります。「困った子」「だめな子」「やる気のない子」「しつけができていない子」などという見方は、子どもの自信や意欲を失わせ、様々な二次的な問題を生ずる危険があります。
LDについての関心が高まり、様々な研究や報告がなされるようになってきています。しかし、このような特性を示す子どもをLDと名付けただけでは、かえって子どもや親を苦しめる恐れがあります。
LDをよく理解し、適切な援助で子どもの能力を可能なかぎり伸ばしてやることが大切だと考えます。
詳しくは、当センター発行の心身障害児ハンドブック第三集「LD」をご覧ください。