教育福島0153号(1991年(H03)02月)-039page
3 児童の意見を反映した栽培作物の選定
4 児童が積極的に喜んで活動する活動過程の工夫
5 日常の活動記録と資料の収集
6 児童の実態調査の実施と変容の把握
(三) 勤労生産学習の効果を高める運営のあり方
1 栽培技術、指導技術の研修
2 生産物の有効な利用法
3 積雪期の活動の工夫
4 学習に必要な施設設備の充実と環境整備
5 勤労の日常化と地域との連携
平成元年度勤労生産学習年間計画 ★種まき、植え付け ○開花 ◎収穫 ×撤去
四、研究の実際
(一) 時間の設定
栽培計画の立案や収穫祭計画は、学級会活動の中で行い、作物の世話の仕方や安全面についての指導は、二分の一学級指導の中に位置付けた。くわ入れ式、収穫祭、愛校活動を勤労・生産的行事の中に五時間位置付けた。
創意を生かした教育活動の時間を「すくすくタイム」と名付け、金曜日の五校時に設定した。その中で、年間四時間を「学級園の手入れ」に、一時間を「収穫祭の準備」に位置付けた。また、地域のお年寄りとの触れ合いとして、「民話を聞く会」と「つる細工をしよう」の時間を三時間設定した。また、水曜日の朝の活動時間を花壇の除草などの環境整備を行う「愛校活動」の時間として位置付けた。
その他、課外活動の時間を活用して、学級園の除草、かん水など栽培作物の世話をする時間を確保した。
(二) 活動内容(栽培作物を中心に)
学校の隣接地の畑十アールを借り、主に農作物の栽培活動をとおして勤労生産学習を実施した。栽培作物については、児童の意見を反映させながら、次のような観点で農作物を選定した。
1 地域の自然条件に適した作物
2 収穫の喜びを味わうことができ、利用しやすい作物
3 作業期間や作業時数のうえから無理のない作物
4 手を加えることにより、成長の変化が表れる作物
5 高度な栽培技術を必要としない作物
(三) 地域との連携
技術指導は、主として農協と農業高校教員に依頼したが、保護者からも栽培の仕方や利用の方法についての助言や、堆肥の提供など多くの協力を得た。
学校だより、学級通信により、児童の活動状況を家庭に知らせたり、児童と保護者の意識調査を行ったりして、勤労に対する家庭と学校の共通理解を図った。
五、研究の成果
(一) 農作物や草花に興味・関心を持つと同時に、生命を尊重することの大切さに気付く児童が多くなった。
(二) 児童相互の人間的な結びつきが強まり、協力して作業することの良さを体得できた。
(三) 作物の収穫祭をとおし、生産の喜びを味わうことができた。
(四) 自然に対する驚きや、汗を流した後のさわやかさを体験できた。
(五) 父母や祖父母が従事している農業に対する理解が深まった。
(六) 勤労体験に基づいた学習が、関連教科や他の領域においても展開され、国語科の作文や詩、理科の観察、図画工作科の絵画などに活動の様子や気持ちが生き生きと表現された。
(七) 児童と教師の触れ合いの時間が多くなるとともに、教室では見られない児童の一面が見られ、児童理解に役立った。
(八) 地域住民との解れ合いが深まるとともに、学校に対する協力態勢が強まった。
(九) 収穫祭での地域伝統芸能「早乙女踊り」の発表や、「民話を聞く会」「つる細工をしよう」をとおし、郷土に対する理解が深まった。
六、今後の課題
(一) 教育課程の中にゆとりある位置付けをし、指導法の工夫と、教師自身の栽培技術の修得に努める。
(二) 天候により、予定通り活動できない時のよりよい対応策を工夫する。
(三) 児童の希望を尊重しながら、学年の発達段階に合った栽培作物を、更に検討する。