教育福島0154号(1991年(H03)04月)-009page
が大切である。この計画は学級担任が学級の独自性を生かし、創意工夫して作成するものである。そこで、この計画が生きて働く計画となるためには、次の点をおさえる必要がある。
(1) 教師の個性や児童生徒の実態を生かす計画として、
ア、学級における児童生徒の実態
イ、学級における道徳教育の基本方針
ウ、各教科、特別活動における道徳教育の概要
エ、生徒指導における道徳教育の視点
オ、学級生活における豊かな体験の計画
カ、学級における教育環境の整備計画
キ、基本的な生活習慣に関する指導計画
ク、他の学級・学年及び家庭、地域社会との連携にかかわる内容と方法
(2) 年間指導計画に取り上げられている重点内容や資料が生かされるように計画する。
○ 男女の協力を伸ばしたいときは男女の協力を柱にするなどの計画
(3) 各教育活動が道徳の時間とどのようにかかわるか具体的に示す。
○ 心に響く体験をさせたいときは栽培活動や勤労的活動などを位置づけた計画
(4) 教室の整備や学級内の人間関係の充実を図る方法を具体的に計画する。
○ 児童生徒の誕生日一覧表の掲示を利用し、誕生日の感想や話し合いを通じ人間関係を深めるなどの計画
(5) 家庭や地域社会との連携をどのように図るか具体的に計画する。
○ 授業参観での道徳の時間の公開や「学級通信」で、担任が道徳教育の啓発を図るなどの計画
(6) 学校行事や学年行事でどのような道徳性を育てるか計画する。
○ 郷土史家やお年よりからの話を聞く活動などの計画
三、児童生徒主体の道徳の時間の工夫
道徳の時間は、道徳教育の目標の実現を目指し、計画的、発展的な指導を通して、各教科や特別活動における道徳教育の「補充、深化、統合」を図ることにある。そのねらいは、この時間を通して児童生徒の道徳的実践力を高めることを目指している。このことは、道徳の時間は「自己を見つめる時間」であるという言葉に端的に表現されている。このような道徳の時間は、年間三十五時間しか教育課程に位置づけられていない。そのために、道徳的価値の押しつけや表面的な指導になりがちである。これらの弊害におちいらないために、いかに児童生徒主体の授業を工夫していくことが求められる。そのためには、次の点をおさえることが大切である。
(一) 指導過程の工夫
道徳の時間の指導が成立するためには、次の二つの要件を満たす必要がある。
1) ねらいとする道徳的価値を資料を通して追求し、より高められた価値として把握すること。
2) より高められた価値観に照らして、今までの自分はどうであったかを見つめること。
指導過程を固定的に考えると深まりのある授業にならない。決められた指導過程を道徳の時間内ですべてやろうとしないで、帰りの学級の時間や家庭での時間、次の朝の学級の時間等、事前、事後の時間も含めた指導過程をも今後は考え弾力的に取り組んでいく必要がある。この方法で授業を展開していくためには、資料やねらい、指導方法、児童生徒の実態を十分考慮して、指導過程を工夫していくことが大切である。
(二) 指導方法の工夫
児童生徒の実態に合った多様な指導方法を工夫する。
1) 役割演技は、友達との相互理解や信頼関係を深めるのに有効である。児童生徒の実態に応じて、動作化や再現劇、葛藤劇、即興劇などを考えていく必要がある。
2) 話し合い活動は、授業の単調さを防ぐのに適している。ペアでの話し合い、四人グループでの話し合いなど工夫していくことが大切である。
3) 読み物は共通思考や感動を与えるのに効果的である。教師の感情をこめた読みや語りかけは、登場人物に児童生徒が感銘を受ける。
4) 郷土資料や体験活動との関連を図る指導は、児童生徒の理解を確かなものにする。体験のない授業はからまわりし、生涯において生きて働く力になり得ないものである。
おわりに
道徳教育を充実させるためには、児童生徒主体の道徳教育を一層推進することが大切である。しかし、教師自身が主体的でなければその効果は望めない。各学校において、文部省の指導資料等や次の実践例を参考にして道徳教育が一層充実するよう期待している。