教育福島0154号(1991年(H03)04月)-037page

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た「テキストプリント」は、空欄及び行間に自由に書き込めることや、物語全体を概観したり、場面を並べ替えることが容易であったりしたことが児童の思考活動を援助し、大変有効であった。また、各行に番号があったため、話し合いの際、児童の発表活動の流れを中断することなく明確に討論箇所が確認できた。

3 検証授業

(1) 「一つの花」から

児童は、表現に支えられた自由で豊かな読みと、表現を離れた勝手な読みとを区別しはじめてきた。

(2) 「ごんぎつね」から

表現の細部に目を向け正しく読み取ることができるようになった。

(3) 「大造じいさんとガン」から

登場人物の心情の変化を心情の直接表現のみならず、情景の描写からもとらえることができるようになったとともに、意見の根拠を明確にした話し合い活動が展開されるようになってきた。また、「椋鳩十の作品をまた読んでみたいと思った。」など、主体的に読書の範囲を広げていく意欲が見られる感想を持つ児童も出てきた。

4 各種調査の結果と考察

(1) 学力検査

国語科学力偏差値の伸びに五パーセントの危険率で有意差が認められたことは、本研究の妥当性を示す一要因であるととらえる。

(2) 自己教育力調査

自己教育力が以前に比べて全体的に伸びてきたということから、本研究が、意欲的な精神活動に裏打ちされる豊かな言語感覚が育つ環境を醸成したということができるであろう。

(3) 学習意欲検査

検査の結果、一パーセントの危険率で、学習意欲の伸びに有意差が認められた。このことから自分の考えに自信をもって授業に意欲的に取り組んでいる児童が増えてきたことがわかる。

(4) アンケート調査

調査の結果、本研究の影響による意識の変容が、理解領域のみにとどまらず、国語科全般に及んでいることが分かった。

 

資料1 教材分析表 (「大造じいさんとガン」の例)

 

七 研究成果と今後の課題

 

七 研究成果と今後の課題

1 研究の成果

○ 言語事項を中心に学習指導要領を分析することにより、つかみどころのないように見える国語科の指導が、系統性を持ったものに変化してきた。

○ 言語事項を中心にした教材分析は、より深い教材解釈が可能になるとともに、発問の幅が広がり、児童の多様な反応にも対応することができるようになり、非常に有効であった。

○ 表現の細部に注意しながら学習を進めることは、あいまいであった読み取りの学習に基準を持たせることになり、児童の正しい読み取りを支えることになって大変有効であった。

○ 自分の考えの根拠を言語事項をよりどころにして、文章中に求めていけば、発表の際に自信がつくとともに、話し合いの論点も明確になり、学習活動が充実していく。

そのことが、児童の学習意欲を喚起し、国語を好きにさせていくのではないかと思われる。

○ 言語事項を中心に据えて理解領域の指導を行うことは、単に理解領域のみにとどまらず、表現領域をも含めた国語科全体への波及効果もあることが明確になった。

○ 豊かな言語感覚を養う上で、言語事項がその基礎として重要であることが明確になってきたことは、本研究の成果であろうと考える。

2 今後の課題

本研究で得られた成果をもとに、表現領域の内容も取り込みながら、総合的な指導を継続していく必要がある。そのためにも、日常の言語活動の充実、そして、授業の質的改善に取り組んでいきたい。

 

 

 


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