教育福島0155号(1991年(H03)06月)-013page
生き生きした学校生活を目指して
−高等学校−
一 はじめに
平成二年度の県立高等学校の中途退学者の数は、全日制の課程において、千五十六名であり、在籍者数に占める割合は一・四一パーセントである。〈資料1〉
このうち、五百三名が「学校生活・学業不適応」を理由として退学しており、次に「進路変更」による者が二百八十一名、「問題行動等」による者が百二十二名などとなっている。
生徒たちが退学に至る経緯を見ると、いくつかの原因が複合した結果である場合が多い。若い、心の揺れ動き易い時代に、いくつもの荷物を背負わされた状況においては、様々な援助が必要である。
生徒指導の意義は、本来、一人一人の生徒の個性の伸長を図りながら、同時に社会的な資質や能力・態度を育成し、さらに将来において社会的に自己実現ができるような資質・態度を形成していくための指導・援助であり、個々の生徒の自己指導能力の育成を目指すところにある。
本県の高等学校においても、このような状況を踏まえ、中途退学の防止を含めた生徒指導上の諸課題への取り組みとして次のようなことがなされている。
1、教師の共通理解を深め、校内指導体制の充実を図る。
日常の教育活動を通して、生徒の実態を的確に把握し、教師の共通理解のもと、学校あげて効果的な指導活動を推進するとともに、生徒指導についての研修を実施するなどして、教師の指導力の向上に努めている。
2、生徒理解の深化を図り、学校生活への適応指導を進める。
ホームルーム活動を中心に、生徒の学校生活への適応指導を進めるとともに、教育相談活動の充実を図り、生徒の個別理解を進め、生徒を多面的に理解することにより、生徒が当面する諸課題への対応に努めている。
3、集団生活における規律の維持向上に努める。
相互に自己を向上させることができる集団の育成に努めることにより、所属意識や連帯感を高め、規範意識を高揚させるなど、集団としての規律の維持向上に努めている。
4、家庭及び中学校との連携を密にし、地域ぐるみの生徒指導の推進を図る。
家庭との連携は、学校教育の基盤である。加えて、中・高一貫の指導、地域ぐるみの活動は、今後更に重要性を増してくる。
生徒は様々な環境の中で生活している。生徒を多面的に理解し、生徒を取り巻く地域社会との連携を図りながら指導に努めている。
二 生徒指導研究推進校について
生徒指導上の諸問題について、一層研究を深めたりあるいは先進的な実践を試みるなどのため、研究推進校を指定している。
これらの研究指定校における研究の成果は、各高等学校において取り入れられ、生徒指導の改善・充実に役立てられている。
平成元・二年度の二年間にわたり、文部省の研究推進校として指定を受け、実践・研究を行ってきた県立喜多方工業高等学校が、平成二年十一月二十日にその成果を発表した。
また、福島県教育委員会指定として、県立双葉農業高等学校が、平成二年度・三年度にわたり、「中・高連携による効果的な生徒指導の在り方」をテーマに実践研究中であり、本年十一月にその成果が発表される。
三 県立喜多方工業高等学校の研究、実践の紹介
今回、「生徒指導の観点からの、人間としての在り方生き方に関する指導の在り方について」をテーマとして、実践的な研究を行った。新学習指導要領において、大きく取り上げられた課題についての先進的研究である。
生徒の成長しようとする生命力を大切にし、集団の中での相互作用によるエネルギーを生かし、生徒自らが自己を生かそうとする力を養うことを目標として研究を推進した。
教師自らが人間としての在り方生
資料1 平成2年度県立高等学校中途退学者状況
【理由別】 全日制
学年
在籍者数
理由1年 2年 3年 計 前年度 25,796 24,893 23,966 74,655 73,224 学業不振 25 23 2 50 33 病気・けが 15 17 6 38 36 経済的理由 3 3 3 9 21 問題行動等 41 56 25 122 180 進路変更 156 107 18 281 263 家庭の事情 17 15 7 39 78 学校生活・学業不適応 215 230 58 503 435 その他の理由 3 9 2 14 31 計 475 460 121 1,056 1,078 中退者数/在籍者数×100 1.84% 1.85% 0.50% 1.41% 1.47% ※その他の理由:結婚のためなど