教育福島0155号(1991年(H03)06月)-022page

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の交流を楽しみに N君はどうしているのか、今度Sさんは来るのかと会話のなかに出てくる。また、自分たちが、河東中生と同じ授業でそれぞれが自分の役割を果たせたことの自信は、将来の社会的自立へ向けて大きな支えになることであろう。本交流においてこれまでにはみられない生き生きとした活動場面、そして健常者との交流に対する期待感などは、養護学校生にとってなによりの成果であったことと思う。

 

モザイク壁画制作

 

モザイク壁画制作

 

二、理解啓発について

 

二年間にわたる心身障害者との交流を体験した河東中の生徒の感想をその感想文にみてみよう。

今回何よりもうれしかったのはM君の声が聞けたことだ。いくら話しかけても首をふるだけで口を開かなかったのに、「M君には兄弟がいるの。」って聞いたら、「うん、弟。」といってくれた。私たちは、びっくりたまげてしまった。とてもうれしかった。次回はもっと話がしたい。次がとても楽しみだ。(二年O生)

まだまだモザイクは完成していないけど、やったところまでをみると、わたしたちと養護学校の人たちとの交流の深さが感じられる。この共同制作をとおして、本当におたがいのことをわかりあいたいと思う。そしてとてもいい友達になりたいと思う。」(二年Y生)

私は、養護学校との交流を通して本当に少しずつですが思いやりの心が大きくなっているように自分では思っています。それとともに「差別」、この冷たそうでいやな言葉がなくなるような温かい社会になるといいなと思いました。(二年F生)

これらの文章から共同制作を通して理解し合う心が芽生えていることがうかがえる。更に、差別のない温かい社会の実現を望む心に発展していることに注目したい。中学生という多感な年代に障害者と接し自発的に好ましい接し方を考え、障害を理解しようとした経験は、やがて、真の障害者の理解へとつながるものと考えている。

精神薄弱養護学校での交流では、合同野外活動での歌やゲームを一緒にしたり、行事での交流が主流である。本交流では、交歓会、野外活動、行事での交流に加えて、共同活動として、モザイク壁画制作を計画的に授業として取り組んだ。このことは、従来の交流活動より一歩踏み込んだ活動として評価されるものと確信している。共同制作に当たっては、両校の教員で、その都度指導案の検討が綿密になされた。生徒たちも回を重ねるごとに自発的な活動がみられるようになった。作品の仕上がりも立派なものになったことは、両校の生徒たちにとっても十分に成就感を味わうことができたものと思っている。そして、この作品は、活動の証として永く生徒たちの心と両校の壁面に残ることであろう。

 

共同活動によるモザイク壁画の作品

 

共同活動によるモザイク壁画の作品

 

体験入学活動を通しての理解啓発

福島県立会津養護学校

 

一、はじめに

 

本校は通学制精神薄弱養護学校として開校二年目を迎え、より充実した学校づくりに励んでいるところである。通学範囲は会津若松市をはじめとする十五市町村にも及び、適正就学への対応は、地域住民の理解や意識とも絡んで多くの問題をかかえている。

このような状況下で、開校間もない本校が、文部省指定「心身障害児適正就学推進研究校」として、「体験入学の在り方」を模索し、研究実践してきたことは大変意義のあることであった。

 

 

 


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