教育福島0155号(1991年(H03)06月)-029page

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今どきの子ども

半澤勝士

 

ごとに指導してきましたが、ほとんど効果は上がらなかったような気がします。

 

今の子どもたちは働かない。働きたがらない。と言われ続けて久しくなります。確かに今までの十九年におよぶ教職経験において、子どもをいかに働かせるか、仕事の好きな子にするかが苦労の種でした。進んで働くこと、仕事を引き受けることが社会に出たり、一人立ちしたりしたときに大切であることを、ことあるごとに指導してきましたが、ほとんど効果は上がらなかったような気がします。

ところが、仕事の好きな子どもたちがいたのです。働くことを嫌がらない子どもたちがいたのです。

本校に赴任してきたばかりのある日、入学したて一年生も混じって清掃が始まりました。(本校は縦割り清掃班を採用しています。)みんな実によく働きます。六年生は下級生を手際よく指示しています。まだ学校に慣れない一年生は二年生の後について一列に並びぞうきんがけをしています。私は思わず感心し、見とれてしまいました。

六月のある日、全校生で校庭の草むしりをしていました。案の定、十分もしないうちにあきておしゃべりが始まりました。「ほらほら、口ばかり動かさないで手を動かせ。」と言おうとして見回すと、手は結構動いています。やがて草は山と積まれました。そろそろ草を運ばうと思い、「おーい、誰か一輪車持って…。」と言おうとしたときには、すでに一輪車に草を積んでいるではありませんか。別な方では、いつの間にか工具まで持ち出して根がなかなか抜けない草を掘っています。そのうち、終了の合図がなると、一輪車と工具は元の位置に戻され、子どもたちは遊びに散っていきました。私は何ひとつ指示することなく、ぼう然と子どもたちの姿を見送るだけでした。

こと仕事に関し、一つ一つ指示しなければ動けない子どもたちを見慣れてきた私にとって、この子どもたちの態度はまさに驚きでした。

本校の子どもたちの仕事好きは伝統なのだそうです。無論、農村という環境や地域性もあるでしょう。しかし、何といっても親のしつけと前任者のしっかりした指導があったからだと思います。同僚たちは、子どもたちが働くと、よく誉めています。「尾野本の子どもたちの良いところは、みんな一生懸命働くことです。」こう言われ続け、どの子どもたちもその気になっています。

対外行事で良い成績をとったり、学力が向上すればもちろんうれしいのですが、子どもたちが汗水を流して働く姿を見るのは、一人の教師としてこの上ない喜びを感じます。

(耶麻郡西会津町立尾野本小学校教諭)

 

一生懸命清掃に励む子どもたち

 

一生懸命清掃に励む子どもたち

 

山と私

横山恒廣

 

その辺だよ。」と言って、ぶらぶら山や川を無目的に歩いて半日くらして帰る。

 

日曜など仕事が一段落し、ボーッとしているとき、ふと気がつくと小さなザックにタオル、軍手、細いロープなどを詰めている。「おーい、おにぎり」というと、おにぎりが決まったように二個出てくる。便利なお金のかからない自動販売機だなあと常々思っている。またその自動販売機は判を押したように「今日はどこへ行くの。」、「うんわからないけどその辺だよ。」と言って、ぶらぶら山や川を無目的に歩いて半日くらして帰る。

学生時代は、日本各地の山を歩いてみたが、足を怪我してからは、山らしき山はほとんど歩いていない。

山を歩くには、人それぞれに目的

 

 

 


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