教育福島0155号(1991年(H03)06月)-042page
養護教育センター通信
共同研究
心身障害児の指導援助のための実態把握の方法に関する研究
−心身障害児の実態把握の方法の適用とその検討−
実態把握の手段といいますと、各種の心理検査や行動観察、面接、医学的検査などが思い浮かぶと思います。これらには、いずれも子どもについての現状を正しくとらえ、指導援助に生かそうとするねらいがあります。
しかし、実際には、心理検査や行動観察をたくさんやるが、資料の収集に終わってしまい、子どもの実態とかけ離れた教師主導の指導をしてしまった、という声を耳にすることが多いのです。せっかくの実態把握が教育実践の場で生かされていないわけです。
当センターでの研究は、このような点を踏まえ、実態把握の一手段としての行動観察に視点を当て、実態把握と指導援助とが表裏一体の関係となるような実態把握の方法を確立することです。
1、何のためにそうしているのかを意識して見る
Aは、机上での勉強には集中せず、すぐ席を離れてしまう場合が多い。強く勉強に誘ったりすると、泣き暴れてしまう。
こんな子どもを前にした時、我々はこの行動をどう理解し対処すればよいのでしょう。現実問題として、授業の場でのこのような行動について、当惑し、悩むことが多いはずです。
これを子ども自身の問題としてしまっては、この状況は決して解決しません。行動は、子どもの心身の状態と本人を取り巻く環境との相互作用の中で起こるものと考えられるからです。勉強に集中するのもしないのも、席に着いているのも離れるのも、すべて理由があるのです。
この行動の前後関係から、何のためにそうしているのかを意識して見てみますと、問題となった行動の意味が、なるほどと見えてきます。つまり、実態把握とは、勉強に集中しない″席を離れる″ということを知ることではなく、これらの行動のもつ意味を理解する″ことなのです。
2、教師のかかわりが問われる
子どもを知るには、子どもとかかわらなければなりません。子どもに働きかけてその反応を見、更に、働きかけ(じっと見守ることも含む)を変化させていくということを繰り返しながら、子どもの実態をとらえていくようにします。
そうしながら、子どもの内面だけでなく、子どもが自分を取り巻く人や物をどう受け止め、どう対処しているかを推測していくようにします。当然、教師のそのときどきのかかわりも子どもの行動に跳ね返ります。その意味では子どもの行動ばかりでなく、教師の行動も見ていかなくてはなりません。
例えば、
○教材を提示するタイミングはどうか
○子どもの声に耳を傾けていたか
○成就感を持たせて行動を終了させたか