教育福島0156号(1991年(H03)07月)-013page
三 基礎・基本の重視と授業の改善
「心豊かなたくましい人間」の育成を図るために、国民として必要とされる基礎的・基本的内容を明確にし、定着させる必要がある。
1 基礎・基本のとらえ方
基礎的・基本的内容は、児童生徒が調和のとれた人間として成長し、国家・社会の一員として社会生活を営むために欠くことのできない共通的な内容である。
具体的には、次のようにとらえることができる。
ア 学習指導要領に示す各教科領域の目標及び内容
イ 各教科、領域の内容で、特に言語と数に関する内容(読み、書き、計算)
ウ 学習の適時性を考え、その学年で身に付けておかなければ次の学年での学習に支障があると考えられる内容
エ 学習を展開するのに必要な辞典、地図、諸資料の活用の仕方、用具やノートの使い方等の学習方法や技術
オ 徳育の基礎となる基本的生活習慣や自己抑制心に裏付けられた自主的・自発的態度
これらの基礎・基本は、全体として思考力、判断力、表現力、創造力の育成につながらなければならず、授業を通して具体化することが大切である。
2 基礎・基本を明確にする手順
(1) 学習指導要領、指導書から
学習指導要領、指導書に示されている各教科の目標や学年・分野の目標、内容及び内容の取り扱いを十分理解し、学年で押さえるべき知識、技能、能力、態度等を明確にする。
この場合、学年の系統性や発展性、他教科との関連性等も明確にすることが大切である。
(2) 児童生徒の的確な実態把握から
児童生徒はそれぞれ知識、技能、能力、態度等が異なっている。したがって、基礎的・基本的内容を児童生徒一人一人に自分のものとして身に付けさせるためには、自校の児童生徒の実態を、諸調査や検査、毎時の授業の観察、評価等から的確に把握することが必要である。
(3) 学習指導要領、指導書と児童生徒の実態から
学習指導要領、指導書の目標、内容からとらえた基礎的・基本的内容と児童生徒の知識、技能、能力、態度の実態を十分対比して、一人一人の児童生徒に身に付けさせるべき基礎的・基本的内容を明確にする。
したがって、各学校においては児童生徒の学習の実態に応じてその取り扱いに軽重を加えたり、指導内容の精選を図ったりすることが必要である。
(4) 年間指導計画及び単元(題材)や単位時間とのかかわりから
(1)から(3)までの手順で押さえた身に付けさせたい基礎的・基本的内容を、それぞれの単元(題材)の目標・内容として年間指導計画に位置づけるとともに、一単位時間の基礎的・基本的内容を的確に押さえることが大切である。
3 授業の改善・工夫
教師はだれでもよい授業、わかる授業をしたいと願っている。しかし、なかなか願い通りにはいかず、「授業がわからない」とか、「むずかしい授業だ」等の声がよく聞かれる。
それでは、どのようにしたらよい授業ができ、しかも基礎的・基本的内容が定着するか、次の点から授業を見直し、改善の努力が必要である。
(1) 主体性を高める授業
児童生徒の“わかりたい”“できるようになりたい”という願いや欲求を満たしてやれる手だてや場の設定を工夫し、それらを通して主体性を一高める授業の創造に努めることが必要である。
1) 学習意欲の喚起
主体的な学習の成立にとって大切なことは、児童生徒の学習意欲である。その学習意欲を喚起し、持続させるために特に次の点に留意することが大切である。
ア 学習への動機づけの工夫
イ 成就感、達成感の体得
ウ 認められたい欲求の重視
エ 真剣に学習に取り組める雰囲気の醸成
2) 学習の仕方の定着
主体的な学習が成立するためには、児童生徒が発達段階に応じて「学習の仕方」を身に付けていなければならない。ここで言う学習の仕方とは、児童生徒が自ら学んでいくための学習の手順や方法等である。
3) 主体的な活動の場の設定
児童生徒が主体的に学習できるようにするには、時間的にゆとりをもたせ、十分活動できる場を設定することが大切である。
そのためには、教師は教科の本質に基づいて指導目標を具体的にし、その目標に即して指導すべき内容を基礎的・基本的内容に精選して、指