教育福島0156号(1991年(H03)07月)-014page
導計画を立案する必要がある。
(2) 個に応じた授業
学習は、本来児童生徒一人一人に成立するものである。教師主導型の画一的な指導から脱却し、個を生かし、個に応じた授業の創造に努めることが大切である。
児童生徒の個人差を次の視点からとらえることができる。
ア 学習内容の達成度、到達度
イ 学習速度の差
ウ 学習スタイルの差
エ 興味・関心、意欲、態度の差
オ 生活経験の差
また、個に応じた指導を展開するためには、次の点に配慮する必要がある。
ア 個人差に応じた教材の開発
イ 個を生かす発問の吟味
ウ 多様な考えを引き出し、生かす工夫
エ 主体的な追求を基盤とした学習過程の工夫
オ 多様な学習形態の工夫
カ 一人一人の興味・関心を生かす工夫
キ 一人一人の学習速度への配慮
ク 教育機器の効果的活用
以上のことに配慮して指導を展開するとともに、学級全員が自分や相手の個性に気付き、尊重し合う温かい学級集団づくりが大切である。
四 道徳教育の充実
近年、社会の急激な発展は物質的な豊かさをもたらした反面、人間としての心の豊かさが失われ、基本的な生活習慣の欠如、人間関係の稀薄化、いじめや登校拒否等の増加が指摘されている。これらの実状を踏まえ、新学習指導要領で、新しい社会の変化に対応できる豊かな心を持ち、たくましく生きる児童生徒を育てるための「心の教育の充実」が強調されている。これらの趣旨に基づき、道徳教育の質的改善が望まれる。
1 道徳教育の質的改善
県内各学校における道徳教育の課題として、次のことがあげられる。
ア 学校教育全体において、内面に根ざした豊かな道徳性の育成につながる体験の場と機会を積極的に設けること
イ 道徳の時間の位置付けとその指導法の工夫をすること
ウ 家庭や地域との連携を図り、道徳的実践の指導を充実すること
これらの課題を解決するため、次の点から改善を図る必要がある。
ア 全教師の協力のもとに、学校や地域の実態、児童生徒の発達段階や特性から、各学校の道徳教育の課題を明らかにし、その解決に努めること
イ 道徳教育の全体計画を学校の教育目標具現化の観点から、全教師で改善し、学校経営に正しく位置づけるようにすること
ウ 学校教育全体の中で、豊かな体験の場と機会を積極的に設け、道徳の時間の道徳的実践力の指導と関連づけられるよう工夫すること
エ 学級における指導計画を作成し日々の学級生活の中で、道徳の時間の内容や方法が具現化されるよう工夫すること
オ 年間指導計画は、全体計画に基づいて、道徳の時間の位置付けや指導方針及び、道徳教育の重点、各学年の指導の重点等が明確になるよう工夫すること
カ 道徳の時間は、各教科及び特別活動における道徳教育と密接な関連付けをし、指導内容の構造化・重点化をして、計画的、発展的に指導できるよう工夫すること
キ 教師と児童生徒・児童生徒相互の人間関係を深めるとともに、家庭や地域社会との連携を図りながら、日常生活の基本的な生活習慣をはじめとする道徳的実践の機会の拡大と指導の充実に努めること
ク 道徳の時間を確保し、指導内容や指導方法の研究と実践に努めること
特に、読み物資料に傾よることなく、説話や役割演技等多様な指導方法や指導形態を工夫し、児童生徒の内面的な自覚を促し深めるように努めること
2 道徳的実践力を培う指導
道徳の時間の指導は、道徳教育の目標達成を目指し、計画的、発展的な指導を通して各教科や特別活動における道徳教育の「補充、深化、統合」を図る場である。それにより、児童生徒の道徳的心情を豊かにし、道徳的判断力を高め、道徳的態度と実践意欲の向上を図るなど、道徳的実践力の育成を目指している。
この道徳的実践力を培うために、次の事項に配慮して指導を進めることが大切である。
ア 全体計画の中に道徳の時間の指導を明確に位置付け相互の関係を明らかにしておくこと
イ 道徳の時間を大切にし、年間三十五時間の確保に努めること
ウ 道徳の時間では、道徳的価値を知識として教えるのではなく、児童生徒自らが内面的に自覚し、主体的に行為を選択し、実践するこ