教育福島0158号(1991年(H03)10月)-047page

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文化活動により広がる生徒の可能性

−ハンディキャップはいらない−

県立聾学校

 

県立聾学校は、聴力に障害をもつ児童生徒が学習をしている学校で、現在、本校、分校あわせて百十三名が在籍しています。

聴覚に障害があるということは、言語力が育ちにくく、情報量が少なくなりがちで、成長の過程において知識・感情・身体のバランスがとれにくい面が見られます。また、意思疎通が思うようにいかないというコミュニケーションの障害は、特に思春期を迎える高等部の生徒にとっては、不安や苛立ちとなって表れがちです。

そこで本校では、生徒の能力を伸ばし障害を克服する自信を得させるために、様々な活動を行っています。バレー・野球・卓球・陸上などの運動面では、聾体通や高体連に加盟し対外試合に出場して活躍してきました。また、昨年度から、文化面での活動も、活発に行われるようになり、演劇・放送・美術が高文連に加盟して、多くの高校生と同じ地盤で自分達の表現力を発表する機会を得て心の励みとなりました。演劇・放送は、初参加ながらも、県大会や全国大会に出場し、大きな成果をあげました。ここで、本校高等部における演劇と放送活動について紹介いたします。

一、演劇活動

聴覚に障害を持つ生徒にとって、豊かな表現力を身につけることは、自らの思いを深め、他とのコミュニケーションを成立させ、安定した精神状態の中で「生きる」力を得ていくために、必要不可決なものです。

本校では、国語の表現領域の中で「演劇」を取り入れています。演劇は、誰もが持っている「感じる心」を呼び起こし、それを表現し伝えるもので、実際にくり返し演じる中で言葉の持つ意味を実感し、全身をつかって表現することの楽しさを知り、創作の過程では様々な役割から、お互いの個性・能力を認めあい協力して仕事をしていく連帯感を生じさせます。

次に、実践過程を具体的に述べてみます。

○「表現」「演劇」とは何かを考え話し合う。

○自分達の現在の生活、生き方、悩みなどを話し合い、劇のテーマを決める。

○テーマに基づいて台本を創る。

○表現手段を工夫し、練習する。

(発声・表情・手話・全身運動)

○役割を決めて練習する

○発表の場を設け、多くの人に伝わる喜び、表現する楽しさを知る。

○発表することで、表現活動の評価をし、次の活動の目標を定める。(学校祭・高校演劇大会など)

○感動の体験を整理・記録し、確かなものにする。

これらの活動を通して、文字言語の概念を自分自身の「言葉」として理解し、自分の一挙手一投足にも意味があり、相手にどのような影響を与えるかを考え、自分の心を人に伝える方法を発見します。そして他とのかかわりの中で、ものを創り出していく喜びを知ります。

二、放送活動

放送活動は、各クラス二名の視聴覚委員により構成され、行事の記録、授業の機器の操作等サービス的分野と、主にテレビ番組をつくる創作分野の活動があります。

番組制作は、昨年初めて制作した「マイサイレントワールド」という学校紹介をした作品が、NHK高校放送コンテスト福島県大会で二位に選ばれ、全国大会に出場しました。今年も昨年同様、県大会二位の成績を収めました。映像を通して自分達の考えを表現するという点では、演劇と同じですが、放送はさらにカメラ技術の正確さ、編集の緻密さ、画像のセンス、字幕をつくる文章力などが要求され、知的作業への挑戦といえます。

これらの文化活動によって、生徒一人ひとりが人と比べて劣っている自分ではなく、共に伸びて行こうとする自分を発見し、人間としての成長と、積極的な社会参加・自立にむけて生き生きとしてきました。今後も生徒の可能性を広げていく活動を継続していきたいと考えています。

 

番組制作の苦労話を…

 

番組制作の苦労話を…

FCT「こんにちは福島」スタジオ出演

 

 

 


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