教育福島0158号(1991年(H03)10月)-048page

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図書館コーナー

県内の読書傾向を見る

−県立図書館−

 

県立図書館では、毎年県内公共図書館での図書の利用状況について調査を行っています。

今回は、これを材料に最近の児童の読書傾向を探ってみたいと思います。

 

一、読書離れ

まず読書傾向というと、必ず出てくる言葉に「読書離れ」というものがあります。このことはいたるところで議論され、すでに議論しつくされたという感じですが、結論はなかなか出ないようです。

ここではここ十年の図書館の利用状況の調査をもとに読書傾向を捉えていきますが、結論的にいえば図書館利用の面からの児童の読書離れは確実に進んでいるといえます。

その理由はまず一つめに図書館の貸出における児童図書の貸出割合の減少という状況から得られます。子供の数が人口増加の中で減少しているというのは誰もが周知のことですが、その数の減少が児童図書の貸出減少の大きな要因だということは従来からいわれてきました。児童数の減少が貸出冊数に影響しないはずはなく、これは読書離れはないという理由に使われていたほどでした。

しかし、参考のグラフをみてください。これは県内人口の小学生の割合と貸出総数からみた児童図書の貸出割合がどれくらい減っているかを示したものです。いずれも一九八○年度を一〇〇としてその減り方を示したものですが、児童図書の利用の中心にある小学生数の割合よりも貸出割合が大きく減っていることが明らかです。

減少の理由としては、テレビ、ファミコン、マンガの普及というように子供の趣味の多様化と選択対象の増加、そして社会的に子供が忙しくなった、学歴社会における塾の普及、子供が今疲れている等の子供社会の変革という大きく分けてこの二つではないかというのが一般的な見解です。

 

二、軽読書化の時代

ところで、読書離れのもうひとつの要因として、読まれている本の質の低下ということがいわれています。図書館で親が子供の本を借りていく時にまず選択の視点として、字が大きいかどうか、字の数が多すぎないかどうかです。必ずしもこの選択方法は間違ってはいません。しかし、子供時代の読書力は急激に高まっていきます。いつまでもそのことばかりが選択の目安ではないはずなのです。

昨年度の終わり頃に福島県公共図書館協会の会誌の中で、県内の公共図書館で読まれている本についての掲載がありました。ここにあげられた児童図書は内容について評価できるものが少ないとの意見が多く聞かれました。確かに厚くて難解な本が敬遠され、読みやすい本が好んで借りられる傾向にあることは間違いないようです。これは、子供の世界ばかりでなく大人も同様のように思えます。

また、読書におけるマスコミの影響の大きさも大人の本と同様です。テレビ放映中の機関車トーマスは、現時点での児童図書のベストセラーですし、NHK大河ドラマに関する伝記は毎年必ず人気になります。

 

〔表〕1980年を100とした県内小学生と児童図書貸出の割合の推移

 

 

 

 

 


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