教育福島0159号(1991年(H03)11月)-043page

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ある。野菜、草花、果樹等の栽培管理や販売、家畜の飼育等を通して体験学習から主題に迫った。この中で勤労の喜びは勿論自然と人間との関わりや生物に対するいたわり、生あるものへの愛情が育まれてくることを狙ったものである。

2 製作的分野

工業科(機械・電気・電子)、家政科で実施。工業科では携帯用バーベキューセット、半田ゴテ、直流安定化電源を製作。これらの製作実習において、生徒は個人またはグループで設計から製品完成まで生徒自らが計画立案することにより自主性と望ましい動労観が体得でき、創造性豊かな人間の育成が図れるとの仮説を立て研究を推進した。

家政科では被服の製作分野に課題研究を取り入れることにより主体性、創造性、協調性が育まれるであろうとの仮説により研究を進めた。

3 奉仕活動的分野

ホーム・ルーム活動、特別活動、部活動を通して、自主的活動を指導援助することにより主題の目標達成が図れるとの仮説より次の活動を実施した。

1) 通学路及び南湖公園の全校一斉の清掃活動

2) 社会福祉法人「太陽の国」訪問

3) 地域ボランティア活動への参加

4 環境美化活動分野

日常の一斉清掃等において、その日の目標を明確にさせるとともに清掃マニュアルを作成して意識を持たせることにより主題に迫った。

5 啓発的分野

教科指導、特別活動等の中で体験する啓発的経験に加えて企業見学と外部講師による職業講話を実施することにより職業についての視野を広げ、勤労についてより深い理解が図られるとの仮説のもとに全学科についてこれを実施してきた。

6 流通的分野

好ましい人間関係を築く基本である日常の挨拶、礼儀作法、言葉遣いを正しく指導することにより望ましい職業人を育成できるとの仮説から「接遇」に主眼を置いた実践を行った。また、商業科においては、総合実践の実習を取り入れ効果をあげてきた。

7 企業学習

通常各科で行われている実習と企業現場とでは、同じ作業内容や同じ製品を製作していても意図するところや考え方は全く異なっている。生徒にこの様な違いや職場で働く人々に直接触れ共に働くことが体験できれば、学校で経験させることが困難な望ましい動労観や職業観が定着できると考えた。

企業の協力を得て、工業科(電気科・電子科)、商業科、家政科の二、三年生二五七名を約一週間の日程で白河市内及び白河市近郊の企業四五社で学習させた。

 

企業学習実施概要

 電気科電子科商業科家政科
対象生徒76名(3年)40名(2年)47名(3年)94名(2年)
実施時期平成2年7月9日(月)〜7月14日(土)
実施企業白河市内及び白河市近郊の45社
勤務時間事業所の勤務時間
仕事内容製造の補助的作業製品の組立調整・検査帳簿等の整理・コンピュータ入力縫製・販売・保育・幼稚園
実習日誌1日の実習内容・自己評価・反省等を1日の実習終了後に記入,担当者へ提出しアドバイスをうける。
全日程終了後、実習全体の反省・感想を記入し、保護者からの意見・感想を記入後学校へ提出
生徒指導学校側の担当者が巡回指導
評価10項目(3段階),総合評価(5段階)を準備して事業所担当者により実施

 

五 研究の成果と今後の取組・課題

 

本校は職業高校であることから多くの分野で研究を進める事が可能であった。そのため、短いこの期間に予想を上回る多くの研究成果を上げることができた。本校では毎日体験学習とも言うべき実習を行っているが本研究においては「勤労体験学習」と「今までの実習」の違いに目を向け、その狙いと意義を明確にして各分野ごとに独自に研究を進め、全体としてその結果を評価してきた。

各分野において、研究実践の度に事前・中間・事後のアンケート調査等を行い生徒の変容を細かく観察してきた。各分野とも生徒の意識は着実に良い方向に向いており研究の成果は上がってきた。

企業学習はとくに力を入れてきた分野で、これまで実践したことの集大成として二年次の七月に実施したものであり、本研究の柱とも言うべきものである。企業学習を実施するにあたっては、長期間にわたる事前の調査研究、受入れ企業との打ち合わせ等検討を重ねてきた。大変労が多かったが素晴らしい成果を上げることができた。企業学習は平成三年度もさらに拡大充実させ実施してきた。

本研究においては、校内ばかりでなく地域との連携や強い連帯感が育まれ当初期待していなかった成果まで上げることができた。課題も多く残されたが今後もさらにこの研究の成果をもとに改善を加え実施していきたい。

 

 

 


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