教育福島0159号(1991年(H03)11月)-044page
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養護教育センター通信
障害児とコミュニケーション
はじめに
障害児教育にとって、コミュニケーションの問題は、障害の種別を問わず共通したものです。そのため、コミュニケーションに関する指導法については、各特殊教育諸学校で、多くの実践・研究がなされています。
何らかの障害がある子供たちが、学校や家庭で他者(先生、両親、友達等)から様々な事柄を学びとって行く上で、他者の意図を読みとったり、または、他者に何かを伝えたりできることが、必須条件であると考えられたからです。
一、コミュニケーションとは
「コミュニケーション」…。私達が、普段何気なく使うことばです。定義についても様々なものがありますが、アサヒでは、ヤコブソンの通信理論をもとに考えてみます。(表1)
この理論は、人と人との通信(コミュニケーション)を考える場合には、1)話し手、2)聞き手、3)接触、4)メッセージ、5)コード、6)場の状況の6要素が必要であるというものです。1)話し手、2)聞き手、3)接触が、コミュニケーションに不可欠なものですが、1)2)3)だけでしたら、私たちは街ですれ違う不特定多数の人といつもコミニケーションをとっているということになります。しかし、これをコミュニケーション関係にあるとはいいません。4)5)6)もコミュニケーションの成立には必要なのです。
二、障害児とコミュニケーション
障害児にとってコミュニケーションの問題点や難しさはどこにあるのでしょうか。
(1) 希薄な「メッセージ」
「メッセージ」とは、相手に何か伝えたいという内容、または、相手がこちらの行動の意味を読みとった内容をいいます。話し手にとっては、まず、相手に伝える何かがあり、相手に伝えたいと思う気持ちが必要なのです。
重度の知恵遅れの子供たちにとって、この相手に伝えたいという内容や気持ちそのものが希薄な場合が多いので、これらの点を重視したかかわりから指導を始めます。
(2) 使用範囲の狭い「コード」
「コード」とは、日本語、外国語、身ぶり、手話等をいいます。話し手と聞き手が共通な記号を持っている必要があります。外国語の話せない人が、外国へ行ったことを考えてみてください。共通な話しことばがないので、身振り等でコミュニケーションをとろうとするはずです。
同様に、話しことばが不十分な聴覚障害者が、手話という共通な記号をもって十分にコミュニケーションをとることができるのです。精神薄弱養護学校等でよく使われる絵カードも、また、共通な記号と考えることができます。
(3) 読みとりにくい「場の状況」
よいコミュニケーションがとれるには、「場の状況」が大事になります。
話し手が「いよいよ、一年生ですね。」といった時、聞き手は「ええ、大変ですよ。」と答えたとします。これは、一見コミュニケーションが成立しているようにみえますが、次の
表1 ヤコブソンの通信理論
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