教育福島0160号(1992年(H04)01月)-010page

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特選入賞論文

「いきいきと児童が取り組む学習の展開をめざして」

−道徳性を高め、思いやりの心を育てる指導−

 

郡山市立芳山小学校

代表 校長 宗像敏郎

 

はじめに

 

はじめに

本校では、昭和六十三年度から三年間、過去十数年来の表記の主題のもとにこの副主題を設定し、教育の今日的課題でもある「心の教育」の充実を目指して研究を進めてきた。

私たちは、「『思いやりの心』とはごく平易な日常生活の中で、具体的に成しうる人間の人間らしい心の営みであり、これこそ人間の道徳性の出発点である。」と考えた。そして、「思いやりの心」は教えるのではなく、気付かせ、育てるものであるという認識に立って、道徳の時間の指導のみにとどまらず、各教科・特別活動、さらには学校生活全体の中での指導を通して、研究を進めてきた。

一、主題設定の理由

1 教育目標具現化の観点から

本校では、自ら考え正しく判断する力を持った人間性豊かな児童を育成しようとする教育課程改善の趣旨、県および市の指導の方針を受けるとともに、児童と地城の実態を考慮して教育目標を設定した。

「人間性豊かな児童の育成」を児童の側に立って考えれば、生きがい=やりがいを感じる学習ができること、そして、日々の学校生活に満足感や充実感が持てることが重要である。そのためには、思いやりのあるあたたかい人間関係や耐えてがんばりぬく力を基盤とし、自らの力で課題に立ち向かい、解決し、行動することが基本となる。

従って、教育目標の具現にあたっては、児童を主体とした教育課程を編成するよう配慮するとともに、児童が自らの力で未知を切りひらく態度・能力を授業の中で育てていくこと、そして、相手の立場を考える思いやりの心を育てていくことが重要であると考えた。

2 授業の質的改善の観点から

これまでの授業は、知識伝達の面が強く、児童の創造性や発想を十分に生かした学習展開がなされていなかった傾向がある。

そこで、授業では、基礎的・基本的な内容を確実に身に付ける過程を通して、思考力、判断力、表現力の育成を基本に据え、何をどのように学ぶかという主体的な学習の仕方を身に付けさせるように配慮しつつ、学ぶことの楽しさや成就感を体得させていくことが重要になってくる。

従って、教師にとっては、児童一人一人の自主的な学習の展開や、内的な思考活動の様子を的確に把握してその活動を援助する立場に立ち、個に応じた指導を工夫することが大切であると考えた。

 

3 副主題設定の理由

(1) 前次研究の反省から

本校では、昭和六十年度から三年間国語科の文章表現力に焦点をあてて研究をしてきた。前次の研究は児童の文章表現力を確実に高め、ものの見方、考え方、感じ方を深めるなど多くの成果をあげてきたが、「心を育てる」という点では、一層児童相互の心の交流を図り、人間性を高めていく必要があるとの反省がなされた。これらの成果と反省をもとに、児童相互のあたたかい人間関係や思いやりの心のあふれでる授業の創造を目指して、より充実した学習指導を展開したいと考えた。

(2) 今日的課題と児童の実態から

現代社会では、物質的な豊かさの陰で心の豊かさが失われ様々な弊害が生まれている。本校でも、現代社会の一般的風潮の中で、勤労意欲の減退や人間関係の希薄さなどさめた児童の姿が見られる。児童の人間としての資質を高め、他を思いやる心の発現を求めて、昭和六十三年度より「心を育てる」研究をすべく本副主題を設定した。

 

 

 


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