教育福島0160号(1992年(H04)01月)-018page
特選入賞論文
一人一人が自らの課題を意識しながら主体的に観察・実験に取り組む授業
−自由試行を通した課題作り〜学習課程の複線化〜観察・実験の個別化を通して−
川俣町立福沢小学校教諭 先崎信雄
一、研究の趣旨
(一) 研究の動機とねらい
新学習指導要領では、社会の変化に自ら対応できる心豊かな人間の育成を目指し、特に「基礎・基本の重視と個性教育の推進」「自己教育力の育成」という基本方針を挙げ「個性を生かして基礎・基本を育てること」「自ら学ぶ意欲と主体的な学習の仕方を身に付けること」の大切さを重視している。さらに、小学校理科の改訂の趣旨では、自然に親しむことや観察・実験などを一層重視し、問題解決能力を育て、自然に対する科学的な見方や考え方を養う指導の充実について述べている。
この指針を基に、教科でねらう確かな理科の力を育成するという視点からこれまでの実践を整理すると、以下三点の問題点が挙げられる。
○ どの児童にも、確実に学習課題をとらえさせて学習に取り組ませていない。
○ どの児童にも、直接経験が十分に図られていない。
○ 問題解決学習の手順と方法を確実に身に付けさせていない。
本実践では、学習指導要領が求める理科の目標・内容を具現する授業を模索しながら、前記の問題点の解決策を探り、児童に確かな理科の力を育成したいと考えた。
資料1 単元の目標分析
(二) 問題の背景となる原因
(1) 導入時の指導において、児童の問題意識をかき立て解決の意欲を高める事象の提示や、一人一人がとらえた問題を学級全体の学習課題にまで練り上げていく手立てが十分でないため、全児童に課題を確実に把握させないまま観察・実験に取り組ませたり、また課題作りの話し合いの場で教師が意図する方向に誘導するなど、児童の考えを生かしていこうとする配慮が十分ではなく、児童にとって魅力のない課題の中に追い込んでいることがある。
(2) 課題別グループや方法別グループ活動の安易な選択は、新たな発想や誤りの発見、また他の活動への欲求に対する対応が遅れるなど児童の問題解決意欲を促進する上での妨げとなることがある。また主張の強い一部の児童の活動に先導され、他の児童にとっては学習活動そのものが受け身になりがちである。
(3) 観察・実験では、児童一人一人が課題解決に向けて自ら取り組むという学び方が不足しており、単にグループ内の役割分担による活