教育福島0160号(1992年(H04)01月)-021page

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童の問いが連続し深まり続けるような単元構成の中に無理なく位置付けるという考えのもとに、1次〜4次の小単元の導入に三つの学習課題作りの場を設定した。

1次では、超縦長の水槽に食塩を投入するとシュリーレン現象とともに消え去る現象を体験させ質量の保存に目を向けさせ、また、2次ではホウ酸の加熱と冷却を繰り返し現われては消えるホウ酸の結晶の観察から溶解度について活動をさせた。

さらに4次では、二色の濃度の異なる食塩水を透明なセルに注ぎ、くっきり二層に分かれる様子をOHPの水平投影によってダイナミックに提示するとともに、一人一人の児童に実際に層作りを行わせその現象の不思議さを十分にとらえさせた。試行錯誤しながら層作りをする過程で次第に児童に問題がはっきりとらえられていき、二つの食塩水の濃さの違いを調べようという学習課題が無条件で決まった。

児童の心に強烈なインパクトを与え、課題を見い出す手立てとしての自由試行活動が有効に働いた。

 

資料3 自己評価結果をもとにした理科の授業への意識のプロフィール

 

(主として関心・態度面) 境界値3.5

 

※ 境界値を3.5とすると、35%の達成不十分な児童の存在が指摘される。

 

※ 境界値を3.5とすると、35%の達成不十分な児童の存在が指摘される。

※ 個別に見ていくと、3、14、16番の普段の学習で理解に時間のかかりやすい傾向の児童が認められる。ポストテストの正答率も3、14番は下位である。

15番はS-P表においても注意係数が高い。

発表の苦手な11、14、15、20番が認められる。

神経質な面のある10、15番の存在が認められる

感想文の記述の内容の分析からも、14、15、16番の児童はマイナスのポイントを挙げている。

※ 以上のような結果を、以後の一人一人の心理状態を注意深く見た学習指導に生かしていく必要がある。

 

五、研究の成果と課題

(一) 研究の成果

(1) 自由試行活動を通した学習課題作りの場を設定したことは、自分の考えの根拠を明確にさせながら確実に学習課題を設定させるとともに、学習課題に対し自分なりのこだわりを持ち続け、意欲的に追究していく力と態度が見られるようになったことから有効であった。

(2) 学習過程の複線化を図ることにより、自らの考えに従って観察・実験の方法や順序や素材を工夫し選択していく、柔軟で多様な活動が可能になったため、主体的に観察・実験に取り組む児童の姿が見られるようになった。

(3) 観察・実験の個別化は、学習課題が児童の必要感や願いの上に据えられ、また学習の進め方や追究の手立てが児童のものになるなど、一人一人に充実した直接経験を保障し、自らの課題解決のために必要な実験を自分の力で組織し活動する態度が見られるようになったことから有効であった。

(4) 複線化を図った指導計画の立案は、具体目標の分析を詳細に行うもととなり、単元の基礎的・基本的内容がより明確になるとともに一人一人の児童に応じて身に付けさせるべき基礎・基本を児童の意欲や関心などの態度形成に至るまで広範囲に渡り明確にした活動を促進するうえで有効であった。

(二) 今後の課題

(1) 自由試行活動から児童がとらえる問題と、全体での繰り上げを通して設定される課題の方向を幅広く予想し、最適な自由試行活動及び内容の選択ができるように配慮しておく必要がある。

 

自由試行活動を通して一人一人に課題が把握される。

 

自由試行活動を通して一人一人に課題が把握される。

 

(2) 本研究の過程において、個別化のみでなく、協力や助け合いなど他との関わり合いの中で共存感情を培い、自己をより高めていこうとする学習態度が見られたことから授業の基盤として生徒指導の機能を生かした授業の展開を一層工夫する必要がある。

(3) 本研究で扱った複線化の考え方は、どんな単元や学年でも使えるものと言い切ることはできないので、どのような場合に積極的に進めるべきか、教材のねらいさらには学年の発達段階等を踏まえながら明らかにしていく必要がある。

 

 

 


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