教育福島0160号(1992年(H04)01月)-048page

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市町村図書館の動き

県立図書館

 

図書館のイメージの変化

 

日本の近代図書館は成立後百年程度の歴史しかなく、これは欧米と比べて極めて短いものです。しかも、近代図書館とはいっても昭和三十年代までは学問と資料保存が運営の中心であり、現在のように貸出が重視され始めたのは、昭和四十年代になってからのことですから、図書館が住民に身近になってきたのは、ほんとに四半世紀そこそこです。

ですから、学生が受験勉強のために席を占領してしまい、本をみるために来た人が席に座れないなどということが起きるように、堅いイメージが末だ図書館につきまとい大きな問題となっているのも事実です。

現在の図書館は、学生だけのものであってはなりません。いろいろな人がいろいろな目的で自由に利用する場が図書館なのです。しかし、象牙の塔のようなイメージが現在でも一般の人を図書館から遠ざけているのです。

 

読書のイメージの変化

 

しかし、そのような状況はあっても、多くの図書館は近年利用を大きく伸ばしています。全国平均でみると図書館職員一人が処理する図書の貸出冊数は、この二十五年間で十倍にも増えています。

これは予約サービスの開始や多くの人が利用しやすい本を積極的に収集する等徐々に図書館が一般住民の身近なものになってきたためだと思われます。近年では当り前の児童サービスも三十年に満たないのです。また、読書のためだけの図書館ではなく、地域の身近な情報を提供する機能を充実してきたことも一つの理由でしょう。

しかし、ここ数年は児童の利用の減少が顕著にみられるようになってきました。これは直接的には子供の数と自由時間の減少に主因があるといえます。また、住宅地の郊外化というのもあるでしょう。しかし、その裏には読書離れというものがあるような気がしてなりません。読書離れといっても単に本を読まなくなったということではなく、読書の価値の低下というか、つまり読書というものが重要だという意識がなくなってきたということです。

また、情報化社会、生涯学習社会という言葉が飛び交う時代になり、情報収集を本に対して期待する傾向が強くなってきました。

人が本を読む時にそれに何かを期待するということは今でもあるでしょう。しかし、読書というものに対する捉え方が違ってきているのは確かです。

それが大人の利用を増やし、子供の利用を減らしているということのバックグランドになっているのではないでしょうか。

 

これからの図書館

 

現在、県内の図書館にはいくつかの新しい動きが出てきています。一つはコンピュータの導入で、これにより情報検索の多面化が可能になりました。二つには、ビデオソフトや録音テープ等の視聴覚資料をはじめとしたニューメディアの導入です。

また、漫画の収集も行われるようになってきました。

そして、三つ目にはネットワークの進展です。図書館がそれぞれ単独で運営していくことは、多様化、高度化する利用者の要望に対して困難になってきました。そこで、図書館同士が手を結ぶ必要性が出てきたのです。

建設される新しい図書館は大型化してきています。いろいろなメディアの導入、増え続ける資料、雑誌の多様化、大型化しなければすぐにもパンクしてしまいます。

しかし、これらの動きは外面的なものばかりです。今後の課題は、もっと内面的なものだという気がします。心の安らぎ、感性の豊かさ、生活の広がり等の求めに応じられる図書館。それには、ゆったりとくつろげる空間、自由で心通い会える雰囲気とサービス。そしてそこに感性豊かな職員がいる、そんな図書館づくりが今後の課題といえるでしょう。

 

 

 


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